このブログを検索

2021年7月21日水曜日

京都スクーリング報告

梅雨明けと同時に猛暑の夏となりましたが、皆さんお元気でしょうか?今日も熱中症で幾人かの方が亡くなられたとのニュース。コロナ禍再燃の中いきなりの猛暑で身体もなかなか慣れぬと思いますので、皆さん健康には十分注意して下さい。暑くなる少し前曇天の10・11日に京都で2年次配当スクーリングの洋画演習Ⅲ-1-塑造と油彩が行われました。

皆さん元気に受講したいただいた様子を由井先生が報告して下さいましたので掲載させていただきます。


洋画演習Ⅲ-1「人体油彩2-塑造と油彩」

前半:6月12・13日
後半:7月10・11日
担当:由井武人先生 

― 観察によって見えてくるもの ―

 こんにちは。今回 (人体油彩2-塑造と油彩のスクーリングを担当した由井武人です。
1年次にも人体油彩1というスクーリングがありますが、この2年次の人体油彩2では前半が粘土を使った塑造になります。なぜ洋画コースで塑造を制作するのでしょうか?


突然ですが質問です。上の3つの形が何だか分かりますか?カボチャでしょうか?抽象的な形に見えますが、わたしたちにとってとても身近なものです。
じつはこれ、人体の形です。

Aは肩のあたりの体幹を輪切りにして上から見た時の断面図、Bはくびれあたりの断面図、Cは骨盤のあたりの断面図になります。並べてみると、それぞれ幅や奥行きに差があることがわかります。
ふだん人体を描く時に真上から見ることはないのでイメージしにくいかもしれませんが、これも一つの人体の形です。前から見たり後ろから見たり、色々な角度から人体を観察して粘土で制作することで、人体というものが奥行きや量感を持つ立体物であることが実感できます。

■前半:

まずはクロッキーを行い、その合間に塑像の心棒作りをしていきます。




角材と針金とシュロ縄で塑像のための心棒を作っていきます。アシスタントの人にも手伝ってもらいながら悪戦苦闘を楽しみます。



美術解剖の資料を見ながらポーズに骨を描き込んでみたり、箱型として人体をイメージしてプロポーションを確認したり、軸を意識して捉えてみたり、さまざまな視点でクロッキーを試みました。



折った木炭を寝かせてポーズ全体の流れや動きを捉えています。クロッキーは「何を見るか」を考えて焦点を絞ると楽しくなります!


 
表面や細部にこだわると全体の構造が曖昧になってくるので、角材などで叩きながら人体の大きな面を探ります。みんなで一斉にたたき始めたので教室中がパンパン鳴ってすごい音でした。


 
椅子に座って視点を固定する平面の制作とちがって、塑像はポーズや粘土のまわりを動き回って制作するので、体を動かす気持ち良さがありましたね。土粘土を手で触る感触だけでもいつもとはちがうことをしている新鮮さがあって「粘土さわるの楽しい!」という声も聞こえてきました。


 
三者三様。同じポーズを見ていてもその捉え方がさまざまで、出来上がった塑像から作者がどのような油彩を描くのか想像できるような気がしました。油彩が楽しみです。
 

■後半
後半の油彩では、人体の立体感や量感だけでなく背景を含めた空間全体がモチーフとなります。人体と背景の関係性などを意識ながら、画面の中に人体が存在し得る空間を描いていきます。



油彩の時の下描きはあたりをとる程度でいいのですが、構造や形を探りながら描いている線がいきいきとしていていいなと思いました。見ている!という実感が伝わってきます。



1日目の終わりに今日のふりかえりと明日の作戦をたてます。
ここでバルール(色価)という、説明するのも理解するのもむずかしい言葉が出てきます。色彩をトーンとして考えながら立体感や空間の表現を目指します。なかなかすぐには理解できないかもしれませんが、枚数を重ねていくうちに「あ、これがバルールということかな!?」と分かるときがくると思います。今は「あーでもない、こうでもない」と混色や配色を工夫しながら模索してみることが大事です。
 


目を細めて確認したり、作品をモノクロでイメージしてみると少しバルールが理解しやすくなるかもしれません。私自身の学生時代はスマホがない時代だったので、色の濃いサングラスをかけて自分の作品を見て、色がトーンとしてどのような濃淡になっているかを確認していました。



肌の中の色の響き合いがきれいですね。背景との色味の関係性も感じられます。
 

離れて見るという万能薬。2日目の午後はとくに離れて見て全体を確認することが重要です。



2日間のスクーリングは三段階に分けて考えると進めやすいと思います。序盤は慎重に、中盤は勇気をもって大胆に、最後はじっくりと楽しみながら描き込みます。
 

忙しいスケジュールですが、なんとかみなさん描き上げることが出来ました


スクーリングでもテキスト科目でも、12年次はモチーフが用意され観察描写が中心になります。それでも不思議なもので、愚直に観察をすればするほど色調やタッチには自然とその人らしさが表れ出てきます。ここに表れているそれぞれの個性が、やがて3年次以降の制作や卒業制作につながっていくのではないかと楽しみに感じられるスクーリングでした!
 


(報告:由井武人先生)

最後はみなさん顔出しでの作品紹介していただきありがとうございました。とても丁寧な指導の様子ですね、「人体は立体だということを忘れずに!色やバルールを確認することが立体的な表現を活かしますよ!」と
由井先生の声が聞こえてきそうです。

ともかく粘土を触り立体を認識し、油彩の色を用い立体的に表現しようと試みた貴重な経験は、これからの皆さんの絵画表現に活かされてくることでしょう。
由井先生、受講生の皆さんご苦労さまでした。(Y)