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2021年12月27日月曜日

1年次スクーリング報告 洋画Ⅱ-2「人体油彩1」K2 / 京都キャンパス・全4日間

 1年次スクーリング報告

洋画Ⅱ-2「人体油彩1K2  京都キャンパス・全4日間

【前半】2021124()5() 【後半】1211()12()



 受講生の皆さんおつかれさまでした。
前半はクロッキーと木炭デッサンの素描学習、後半はF20号の油彩制作、それぞれ2日で一定の完結をみることとしました。予期せぬラッキーもあって前後半同じモデルさんと実に長きに亘って向き合えたこと、遠隔授業では望めない生身の人体空間のリアルを前に観察三昧の4日間となりました。
 改めてこの美しくも不思議な物体が何たるものか、複雑な構造の有機形態におよぶ微妙なトーンの流れを拾いながら、その背景もツライチのバックではなく広がりや奥行きをもった空間であること、目と対象の間にも空間は充ちていて、平板なヒト形を描くのではなく、立体的空間に人がどう在るのかを十分に意識して取り組んでもらいました。
 裸婦像を描かせていただく貴重な学習ゆえ皆さんにも特段の配慮をお願いしましたが、休憩時間であれモデルさん在室時は授業風景の撮影もままならず、乏しい資料画像からの報告となります。4日間の学習の流れを振り返り、成果物としての作品をみておきます。


前半1日目午前、クロッキー】

106分毎、プロ意識旺盛なモデルさんの多彩なポージング、場所移動しながら多数枚、プロポーションやムーヴマンを簡潔に捉えること。


【前半1日目午後、木炭デッサン開始】

ポーズを固定、スケッチと場所決め、構図等のアタリとってプロポーションを計測しながら形を取り始める。輪郭を追わない、面で捉える、曲線は微分して接線の傾き変化を繋げる、まだ目鼻を描く段ではない等々を経て、大まかなトーンをのせながら量のある人体構造を形づくっていく。面の向きの変わる稜線でトーンが変化している様子を理解するなど、木炭がのってきたところで17:00ポーズ終了。続きは明日、16:00仕上げを目指す。




「寸評会」半日の仕事を点検



【前半2日目、木炭デッサン~完成へ向けて】

受講生ごとに進捗は異なるが、フォルムの修正に時間を費やしながらも細部の描写に入る。部分と全体の関係を常に比較対照し、細部の小さなトーン変化が全体の大きなトーンの流れに整合していること。柔らかな諧調変化に慎重な木炭や消し具の遣い方ができてきた一方で、塊としての量感、立体的空間意識、ムーヴマンの印象を弱めたとも。ポーズ終了後、キャンバス張りの説明、油彩ガイダンス、講評会を行った。




「制作風景(演出)」光のセッテイングはこんな感じ





「制作風景」中/逆光に魅せられるも画面が暗く見辛い、休憩点灯時のチェックが怠れない




「講評会」自己点検と発表、6日後の後半を楽しみに前半を終えた




【後半1日目(全日程3日目)、油彩制作開始】
ポーズはモデルさんに一任、1回目何度か微調整を加えながら、2回目でポーズを固定。複数案の構想スケッチからそれぞれの場所を選び、キャンバス上で構図を決めた。順次、形をとり、画面全体に絵具をのせてトーン構成を計画、午後から肉付けに入る。




「描画プロセス」画像左から右へ、左/輪郭線をテレピンで留める、

/大きな面の塗り分け(粗描き)、右/トーンの色だしと肉付け(中描き)





「寸評会」油彩1日目の仕事を確認、明日一番にすべきことを各々発言



【後半2日目(全日程4日目)、油彩制作~完成へ向けて】

画面が乾いていないうえでの生描きゆえ(プリマ描法という)、当日中の完成に破綻なきよう絵具量を抑えてきたか、油絵具ならではの物質的魅力には届かない薄い表現でまとめに入った感。色彩についても近似色相内での予定調和に留まらず、積極的に色相幅を広げながら、明度・彩度とも絡めた色彩トーンの増幅を求めたい。その強度をもって明快な立体感や空間の描出に繋げ、人の確たる存在感を示す。ここでは滑らかな肌質感や細密な表情描写等は題意にない。どこかで理想化や叙情の味付けに憧れもあった。




「教室風景」ゆったりしたスペースでの制作




「講評会」発表と講評、作品評と併せてこれからに繋げたい持ち味を確認、習得すべき弱点とも




「受講生の発表例」先に終えた2年次人体の作品を持参(床作品)、今回は色遣い

に問題意識をもって取り組めたという、たしかに陰色に改善がみられる



4日間の学習「素描と油彩」 受講生11名(学籍番号順、上下配列同じ)






あっという間の連続2週、4日間でしたがクロッキー・デッサンから油彩へのアプローチに間を空けず、かつ同一モデルで連作できて何よりでした。本来、わずか2日で20号油彩を密に仕上げるのは相当な画力を要するもので、基礎学習中の皆さんには大変な課題でしたが、各々の観察眼や描写技術に一歩前進が確認できたことで、スクーリングの収穫として今後の礎になるものと考えます。

本稿がいつブログアップされるのか知りませんが、年内ならよいお年をお迎えください、あるいは年明けなら本年もよろしくと添えます。おつかれさまでした。

(報告 水口裕務)







2021年12月26日日曜日

卒制5東京の皆さんへ

2日間おつかれさまでした。額の裏につけるヒートンについての連絡です。大学で準備するそうです。

クリスマスがおわり、今年も残りわずか。体調にきをつけて、また2月にお会いしましょう。

2021年12月25日土曜日

洋画3年次抽象スクーリング報告

 洋画Ⅴ-9《抽象》東京・京都スクーリング報告

 今回は前半が遠隔授業、後半が対面で行われた洋画Ⅴ-9抽象の東京(T)と京都(K2)スクーリングを少しごっちゃになりますが報告させていただきます。遠隔・対面授業の双方をイメージしやすいと思いますので是非参考にして抽象を身近に感じていただければと存じます。

 今年度より洋画必修となった抽象スクーリング。洋画コースでは皆さんに抽象画を目指してもらいたいわけではありませんが、いまや抽象画は絵画展でみかけないことはないと思います。「具象画しか興味がない」或いは「難しそうでいやだ」「技術が学べない」と思われている方もおられるでしょうが実は抽象画は決してむずかしくなく、自然に造形が理解できるとともに、とても油彩画技術の勉強にもなります。


「洋画Ⅴ-9抽象Tスクーリング」

前半遠隔:10月2・3日(担当:山河全)

後半対面:10月30・31日(担当:小林良一)

「洋画Ⅴ-9抽象K2スクーリング」

前半遠隔:11月13・14(担当:相見節子)

後半対面:12月11・12日(担当:山河全)


■まずは双方の前半、遠隔授業から

遠隔授業ではPCソフトのzoomを使用しますが、コロナ禍が始まった昨年の最初の頃は教員も受講する皆さんも手探り状態の授業でしたが、皆さんも相当に慣れ授業進行もスムーズになってきました。皆さん無事授業参加…


出欠を取り終えたら…あれれ1人退出してしまった!みたいにWi-Fiが安定せず再度トライする場合も時折ありますが、慌てず入り直してもらえれば大丈夫です。


最初は事前課題の抽象水彩試作品発表ですね。
上はクレー、下はバーネットニューマンかな?
遠隔では通常の会話指導以外にこのように画面共有というzoomソフトの機能を使って皆さんの画像を表示してもらいます。指導どおりやれば意外に簡単にできますのでご安心を。


抽象初めてはこんな風に著名作家に似た形になりがちですがそれぞれが感じたことなので気にせずとも大丈夫。
皆さんの事前課題発表が終わったら、今度は教員が画面共有しながら課題説明に入ります。



20Ⅽ美術が生んだ抽象の巨匠たちが試したさまざまな抽象への冒険を見ていきます。



もうここではドローイングの説明に入りましたね。


上は今回抽象の入り口にするオートマティズムの手法紹介です、下は相見先生のオートマティズム説明とドローイングサンプルですね。


すぐに手に入るマチエール素材などの紹介もします。


さてここからは皆さん思い思いのドローイング開始!
ですが、決して難しく考えず子供時代の遊びのように楽しんでもらいます。


オートマティズムとは意識せずにつくる造形、上はコラージュですね。下はスタンプ、デカルコマニー、垂らし込み、霧吹きのようなものもありますね。一日目の終わりには
それぞれに興味を惹いたものを提示し発表してもらいます。





ご自分の足の上から霧吹きをしたらこんなになりました。
それで満足できずスタンプしておられます。
何も考えなくても造形的見え方の工夫をされた例ですね。



2日目には後半の油彩やアクリル画完成を目指してエスキースを作っていきますが、その後半に用いる事前課題の綿布パネルの作り方紹介です。こちらもパネルに送付される綿布を張りジェッソを塗るという簡単なものです。


さてさて皆さん何ができていくのか?
すこし京都・東京混ざり乱雑ですが、皆さんの苦心のエスキースをご覧ください。

全くモチーフも具象再現もなく、オートマティズムで遊ぶ中から自然にそれぞれがまとめあげた造形です。初めての方が多いのですが、とても見事な作業内容でした。
さてこのそれぞれの造形的発見が、後半ではどのように油彩・アクリルで描く絵画へと発展するのでしょう。

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■そして双方の後半、対面授業では…


 東京・京都のすべてのスナップがないのが残念ですが、授業のいくつかのシーンを紹介しておきましょう。
 皆さんまずはエスキースを並べ自らの構想を語りつつ、後半の事前課題である「ジェッソ下塗り綿布パネル」への描画を試みていきます。
 まずは構想の見直しから…、勿論そのまま描いても一向にかまわないのですが2日間でどこまで描けるか、本当にエスキースのまま全体を描きたいのか?などを考え、自らのエスキースをどのように画面に取り入れるかを考えてみます。

そのなかでもエスキースのトリミングや角度による見え方の工夫です。下記は撮影→プリント→コラージュ




次はエスキース自体を折り曲げて撮影




そして、頭から離れぬ地図を土台にジャスパー・ジョーンズ風タッチに挑戦




はたまた、全面ではなくトリミングして描写に挑戦!などなど実に人それぞれのアプローチが登場します。




いつの間にか構想が縦から横へ、また逆へ…
次第に造形美を狙う眼へと変化していきます。



とにかく絵具を増やし手数を押しまず頑張るしかない!


コラージュのおまけでできた残骸の造形
美しいです。


ただひたすら描写、なんか妙な幻想絵画に見えてきました。


ジャスパージョーンズ!ちょっとクレーも入り出したか…


眼が選んだ造形を実現しようと絵具との格闘がつづきす。
そうなのです!絵は何よりも絵具をうまく扱うことが何より大切なのです。アイデアや構想は能く探せばそれぞれの中にいっぱいありますが、それを実現するのは絵具の扱いなのです。そのことを次第に意識できるようになれば大いなる成長といえるでしょう。

実験ドローイングからエスキース制作、キャンバスへの描画と僅か4日間のスクーリングですが、難しく考えても最後は絵具との格闘に明け暮れるのが絵画、そしてこの抽象も自らが選んだ造形を絵具によって実現するという難しさを体験していきます。

そして…できたものは


今回は見事に再現によらぬそれぞれの抽象画になりました。「エスキースと全然違うじゃない」と思われるでしょうし受講生からもその声がでましたが、現実的に偶然できた美しいマチエールや微妙な色彩対比、筆致などを緻密に再現するのはプロの画家にとっても至難の業。
それも2日間という短い時間での再現となるとモノによってはとても無理な場合も多く出てきます。
そのうえ油絵具、アクリル絵具はそれぞれに得意不得意分野があり、そう簡単に皆さんの思い通りに乾いてくれたり、グラデーションをさせてくれません。
そこで必要になるのが、柔軟な構想の転換や造形性を重視した画材の扱いの工夫なのです。
 その点では今回の東京T・京都K2スクーリング受講の皆さんはとてもよく格闘・工夫されたと思います。

 何も考えず試すことから始め、次第に生まれてくる自らの構想や造形的興味に忠実に、最後は絵具のみで何ができるかがしっかりと試せたのではないでしょうか。
 決して満足のいく結果ではなくてもとても充実した作業ができたと思います。それぞれが大いに抽象という新しい空気を吸い、大画家たちがどのような苦心のすえ抽象画を生み出してきたか、その一端を垣間見たといえるでしょう。
 今後抽象画を鑑賞する際には、いままでと全く違った見え方を感じるでしょうし、具象画を描く際にも自らの眼が選ぶ造形性がきっとむくむく起き上がってくると思います。
 楽しくも生みの苦しみを体験する貴重な授業だったと思います。先生方受講生のみなさんご苦労さまでした。
今年も残り少なくなりました、自らの作業に自信を持ち是非良い年をお迎えください。(Y)














2021年12月15日水曜日

2021年度の大学院スクーリングが修了しました。

 この時期になると1年が早いとハンコを押したように思います。

そして、大学院の最終スーリングが終わりました。

 M2は全員大作を完成させ、いや、あと一息というところまで来て、修士論文(制作研究ノート)の最終チェックを終え、1月の提出にこれから備えるための冬ごもりに入ります。

 M1は50枚のドローイングや10号の自主制作、 50号〜の作品を5〜6枚完成させ、おまけに学外でのグループ展を企画運営しました。課題の多い、忙しい1年を過ごしていただきましたが次はいよいよ修了制作と修士論文です。4月までじっくりとテーマを温めていただきたいと思います。


 さて、冬ごもりに入ったM2はこれから一世一代の最終試験(口述)に向けての論文提出と審査願いの提出を忘れないでください。

 ここからは制作風景などを画像で見ていただきますが、作品は極力トリミングを行い全体像は改めて修了展をご覧いただき、生の作品に触れていただきたいと思います。












 今年度もなんとバラエティー豊富なこと!  修了展が楽しみです。

M1も同様に研究テーマが違います。ざっと見せていただきますと、、










実に名残惜しいのですがこうして今年度の大学院のスクーリングはおしまいです。
みんなさん元気で新しい年をお迎えください。