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2013年5月15日水曜日

【展覧会報告】

5月12日に東京ガイダンスがあり、久々に東京での展覧会を見てきました。今日はその報告です。

《今日の墨表現展》 ~6月23日(日)まで(新宿区佐藤美術館)

 久々に早朝5時30分起床、東京信濃町駅に9:50分到着。駅向かいの慶応病院横の線路沿いに下っていくと、道なりに曲がって約5分程度で佐藤美術館へつきました。
 優秀な通学生が奨学金などでずいぶんお世話になっているのに初めて訪れ、東京学舎からすぐなので驚きました。
 展覧会は若手から中堅の方まで日本画を中心とした水墨画表現の展覧会です。本学日本画コースの菅原健彦先生と奥村美佳先生が出品されていました。
 オーソドックスな日本画形式から抽象的な作品まで多様な表現としての墨が楽しめます。
墨を使っている私としては、煙を描いている及川聡子さんの作品と、小滝雅道さんの抽象作品が興味深かったですね。二人とも造形的にも大変美しい作品ですがどうやって描いているのだろうと思ってみていました。
 だれもいないのでゆっくりと鑑賞できました。10:30頃にガイダンスの用意をしなければならないので、学芸員さんに「いつもお世話になっております。」とあいさつだけして退出しました。
 

 

洋画にも通じるものもありますので、興味のある方は東京キャンパスの近くですのでご覧になると良いと思います。


《フランシス・ベーコン展》~5月26日(日)まで 東京近代美術館

 ガイダンスや仕事が終わってから、東京学習会「ザ・デッサン」の方たち二人と竹橋の近美へベーコンを見に行ってきました。
 ずいぶん昔に京都近美でもやっていたことがありますが、久々にみても強烈さは圧巻でした。今回は特に身体と絵画表現の問題にターゲットを絞った内容で、ウィリアム・フォーサイスや土方巽のダンス画像などもありました。
 みなさん日曜美術館やその他の宣伝で、しっかりとそのことを周知のうえで来場されたのか、熱心に身体からの観点で鑑賞されている風でした。
 私はというと、あまりテレビも見ないので前知識なしで単純にベーコンを味わってきました。
以前もそうだったのですが、私にとっては1940~50年代の口を開け叫ぶような枢機卿やその他の肖像画がぐいぐいと惹かれていく印象で、ストレートな感じがしました。
一環していえるのが、ベーコンは強烈で美しいというより生々しく、焦点は人間や生命の原点である化粧なしのむき出しの現実に目をむけていることです。
 彼はみてはならぬもの、というより敢えて見ようとしないもの、それを却って魅力的なものとして感じているようにすら思えます。この点では彼の絵画は表面ではなく内面を映す鏡として成功しているのでしょう。
 21世紀に絵画を学ぶ人は好き嫌いをとわず、このベーコンやルシアン・フロイドといった生々しい人間表現をさけては通れません。是非この機会に足を運んでみてください。
6月8日から9月1日までは愛知県の豊田市美術館でも見られます。





関東の方でまだの方は、是非ご覧になることをお奨めします。


《大神社展》~6月2日(日)まで 東京国立博物館

 こちらは、前回案内していた私めの実家、若狭神宮寺の「750年門外不出のご神像」を拝観?に学習会の方を無理強いして上野の東博まで足を延ばしました。
  白鳳期、奈良期、平安期などのユニークな神像とは違い、仏教が浸透した鎌倉期のものですのでとてもリアルで、やや堅苦しい感じの神像なのですが、色彩が残っているのも珍しく神像を語るなかで重要な位置を占めるものらしく、五度も依頼をしていただき展示に漕ぎ着けたとのことです。
 
 私はそこで育ったので、数年に一回程度掃除や虫干しの折に拝顔しておるのですが、こうして比較してみると灯台元暗しというか、不思議に気品を備えた存在感やリアリティがあり、なるほど担当者の方が何度も足を運んだ理由はあるのだと感心しておりました。
 住職の要望でパンフやポスターには登場していませんが、展示会場では、第三室の中央の石上神宮の七支刀と同じぐらいの扱いで、最終第四室の最終壁面に大ガラスの陳列ケースに一段高く鎮座しておられました。
 重要文化財なのですが、絵葉書も長形の特大サイズで扱ってもらい、並み居る国宝を差し置き大変丁寧な陳列もしていただき、相当配慮していただいていることがわかりました。担当者の方には感謝感謝!!



ともかく、実家の宝物がどのような見え方をするのか確認する役目?を終え、ほぼ五時に展覧会鑑賞を終えました。
 東京以外は陳列されませんし、多分もう二度と若狭神宮寺の門外に出ることはないと思います。他にも七支刀や古事記、日本書紀なども展示されています。もちろんどれも訪ねて行ってもおいそれとは見れない歴史的名品ばかり。歴史や寺社に興味のあるかたは必見!

 
あ~よく歩いて疲れた。その後学習会の方とビールを一杯ひっかけ11時頃京都へ帰ってきました。

長谷川宏美先生、門川昭子先生の出品されている国画会展(国立新美術館)。2012年度卒業生もお二人入選を果たしていますが、仕事が終わったのが13:30なのでやはり無理でした。ごめんなさい(Y)




2013年5月9日木曜日

【スクーリング・展覧会報告】


五月最初のブログアップ、画像はありませんが最近見た展覧会と卒制スクーリングの報告です。

《卒制スクーリング》

A日程4月28日~30日とB日程5月1日~3日に亘って、今年の卒業制作ニクラスの最初のスクーリングが行われました。今年からA日程は中原先生と相見先生、B日程は今年通学から通信へ主任としてこられた川村悦子先生と私というゼミ担当になりましたが、特に問題もなく無事に終了しました。着手中のみなさんお疲れさまでした。

 この最初のスクーリングでは、各自のテーマから考えた立体作品を持参し、それをモチーフにして10号のキャンバスに絵画化していきいます。
 50号の自由課題のエスキースも持ってきてもらうので、みなさん直接卒制に入ると思うのか、立体とは関係ない10号をイメージして来られますが、実はこれ、3年次で行ってきたモチーフやテーマを立体を通じどのように画面にアプローチしていくかをもう一度見直す課題で、戸惑いもあったようです。
しかし、立体構成とはやや違う趣の、それぞれの思い込みで作れらた立体は中々面白く、却って整った造形性からは生み出せぬ興味深い画面が登場しました。とりあえずこの部分は悩みながらも新しい発見があったのではないでしょうか。

 さて問題はここから。というのはこれから着手者は夏までの間相当の準備が必要になります。

①このスクーリングで教員からOKの出たエスキースをもとに50号を二枚描き7月に提出します。
②同時にポートフォリオに使う作品写真を撮りためていきます。これは一二年次の課題は一切入れず、三年次からの課題と自由課題の作品で20点の油彩と10点のドローイングが必要になるので作品数が足らない方はこれからバリバリ描かぬと間に合いませんね。
③50号を描きながら、制作ノートや造形的発見を副論の下書きとしてメモしていきます。
④夏のスクーリングまでに100号のエスキースを二三点作らねばなりません。
他にも100号をどうして搬送するのかとか、濡れたキャンバスをどうして持ち帰るのかなどの説明で、初回からてんこ盛りのスクーリングでした。

以上が夏までのスケジュールになります。大変でしょう!でもこれをやっておかないと卒業はできないのです。また、三年次までののんびりペースでは実力が付かないとも言えます。
皆さんこのほかに、残りの卒業単位数取得や試験、教育実習などがある方も……。
でもまあ、これまでに健康の問題や仕事の問題でリタイアした方以外は全員卒業制作は無事に終えておられるので一気呵成に駆け抜ける時期だとでも言えるでしょう。
全て、後半半年を100号の卒制本体に没頭するための試練です。

これから卒制へ臨む方は、シラバスをしっかり読んでイメージをしておいてくださいね。
ともかくこのように今年度の卒制がスタートしました。6月には中間講評があります。全員はこれませんが毎年たくさんの方が作品を持参し参加します。
どのような作品が見られるかこれからが楽しみです。
 みなさんもこのように着手者が精魂込めて作り出す3月の制作展を楽しみにしておいてください。


《展覧会報告》

上記の卒制スクーリングはてんこ盛りの宿題に加えて、内容もてんこ盛り。両日程とも二日目の14:30から京都近美へ出かけました。
 内容は「交差する表現展」とい展示で、造形作家のデザイン性や工芸性を交えての一風変わった展覧会でした。狩野芳崖や浅井忠、恩地幸四郎なども登場し絵画やデザイン、工芸などの意匠性も楽しくみれる展覧会です。

 
 B日程では、希望者だけ京都市美の関西二科展、近くの細見美術館、府庁となりの中信美術館の三尾公三展などへ足を延ばしました。
 私と川村先生、その他半分ぐらいの学生さんは関西二科展と三尾公三展を見てきました。
三尾先生の展覧会は私も川村先生も二度目でしたが、あらためて先生の卓抜した手仕事の跡を拝見し感慨ぶかいものがありました。

 さて、私はスクーリングの後風邪をひいてしまい、二日ほどしんどくて家で過ごしていましたが、ふと気づくと、京都国立博物館の「狩野山楽・山雪展」が今週中まで。水曜日からは授業や添削があり日曜日は東京でのガイダンスなので、火曜日に急いて見に行ってきました。
 キャンパスメンバーズに入っているので学生さんは300円ですが、私たち教員は一般と同じく1,400円(トホホ)を払って入場。
 連休中の混雑は平日で一段落したようで意外にすいていましたのでゆっくりと鑑賞できました。
前回、通学TAをしている立野さんの「山楽は絵画の問題として空間を扱っており、山雪は工芸的で装飾的だったので山楽の方が好きです。」というコメントを頭の片隅において見ていました。
 それに加え、川村先生も「山楽はよかった!」という一言も去来しながらでしたが、意外や意外!私には山楽は狩野派を維持する役割のためか、聖徳太子絵伝や今は存在しない巨大な泉涌寺天井画の下絵など処々にその才気を発揮しながらも、狩野派独特(師匠の永徳)の豪放磊落な筆致を受け継がんとして、前評判とは違いなんとなく「大変だったのだろうなあ。」などと絵とは別の感慨を覚えてしまったのです。
 かたや、山雪は狩野派を踏襲しながらも、自分独自の表現を模索していたのがありありと見えてきました。どちらかと言えば永徳などの豪放な感じを嫌い、繊細で優しさの表現に徹していたように思われます。途中からは狩野派ではない雪舟や牧谿などの水墨画、漢画のミニアチュール的な影響などが色濃く反映されています。特に、それまではぼかしなどで処理されてきたグレースケールのみを駆使した不思議な作品はフロンティアの精神に溢れ、デザイン的な要素は後の浮世絵に影響が色濃く出ています。筆さばきは、太筆の作品は一本調子に見えますがスピードを殺し、浮薄を出すよりもそれを整えようとしてする意図がありありと見え、中間色の扱い方や小筆の扱いに至っては永徳とは逆の筆跡を感じさせない、超絶技巧を意図したことが如実にわかります。
 川村先生や立野さんの感じ方、私の感じ方はそれぞれですので、どれが正しい見方などはありませんが、とにかく前知識とは違った「山楽に驚いた!」の一語に尽きる感想となりました。
 
 
 山楽は狩野永徳に見込まれ、その後の狩野派を背負って立たねばならぬ運命であり、山雪はその山楽のに見込まれた弟子であり、婿となった人です。二人とも狩野家の血筋ではないけれど、門人でありながら、宿命のもと狩野家を託されたわけですから、私たちがとてもたどり着けない血の出るような訓練のもと、自分の絵がどうあるべきかを狩野派とみられる社会性とともに必死に探りながら生きた人なのだと思いました。
 この二人の展覧会は日本絵画史の中の、狩野派というものを知るのに大変役だったように思います。
 展示は12日まで、特に金曜日からの三日間は混むと思いますが、行ける人は必見です。(Y)
(金曜日は夜20時まで見られますが、並ぶのを覚悟で行った方が良いと思います。)


【教員展覧会案内】


 ちょっとつけたしになりますが、ひとつ教員の展覧会を案内しておきます。
抽象スクーリングでおなじみの中島一平先生の個展案内です。
DMがデスクに置いてあったのに気付かなかったので、お知らせが遅れました。
 DMだけでデータで案内をいただいていないので地図などはありませんが、HPの紹介をしておきますので、中島先生ファンの方はHPで地図を参照して是非ご覧ください。(Y)

http://galleryhaku.com/

場所:ギャラリー白3 〒530-0047大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3F ℡06-6363-0493
会期:5月6日(月)~18日(土) 11:00~19:00(土曜日17:00まで)日曜休廊