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2018年6月30日土曜日

京都一年次スクーリング報告


 関東では梅雨が明けたとか…その矢先、滋賀県米原市や岐阜県などでは竜巻というか突風などで家屋の屋根が飛ぶなど、天候不順を実感させるニュースが流れました。日本といっても縦に細長く南北では気温も降雨量も違います。
 いまさらながらですが、温帯とはいえ亜熱帯さながらの局地的なスコールや、先日の大阪北部地震のような自然災害があるのだと実感させられます。
ニュースなどではあまり見えませんが地震や、風水害などの被害に遭われた皆様、心よりお見舞い申し上げます。負けずに頑張って下さいね。

さて、6月も終わり京都ではそろそろ祇園囃子が聞こえてきそうですが、由井先生より先日京都で行われた静物木炭デッサンのスクーリング報告が届きました。

洋画Ⅰ-3「静物木炭デッサン」


期間:6/22()6/24(日)担当:由井武人先生、古野恵美子先生





 6/22()6/24(日)で京都の瓜生山キャンパスにて、1年次の静物木炭デッサンのスクーリングが行われました。

 美術大学に入学してそろそろ半年、いくつかのスクーリングを受けられた頃でしょうか。牛骨や石膏像など、これまでのモチーフらしいモチーフに比べると教室に入った時に「これを描くの?」と思われるかもしれません。
そうです、今回はこれを描きます。


  モチーフという言葉を辞書で調べてみると「動機、理由、主題という意味のフランス語」となっています。「主題」は分かりやすいですが「理由」という意味もあるようです。1年次は観察描写が中心なので全課題モチーフが設定されています。そして絵を描く力をつけていくために、何となくではなく「理由」があってモチーフが選ばれています。
 今回の「理由」は何でしょう?
ヒントは、牛骨や石膏と違ってモチーフが複数個あることです。


 一日目、まずはクロッキーをして場所を決め、エスキース(本番を想定した下絵)で構図を探っていきます。線が、物を見た痕跡として画面に重なっていきます。一日目の取り組み方としては、目指せジャコメッテイです。




 モチーフが一つの時は真ん中に大きく描くだけでも絵になりました。しかし今回はモチーフが複数個あるために、画面にどれくらいの大きさでどう配置するかということを考える必要があります。ここがとても重要です!
午前中粘ってエスキースを作っていくことが、このスクーリングを実りあるものにする秘訣です。一日目は明暗や細部よりも、形とプロポーション、構図で粘っていきましょう。


 二日目は大きな明暗の変化を観察してどんどん調子(トーン)をのせていきます。





これだけ大きな画面に腕を大きく動かして木炭を紙に擦り込んでいくだけでも、身体的な感覚が鉛筆デッサンとは全然ちがいます。とくに二日目の午後は、ベースとなるトーンを擦り込んでいく必要があるので画面全体にどんどん木炭をのせていきます。ここで思い切れた人は絵が大きく変わります。物だけでなく、物と物の間の空間や光、薄暗さもモチーフとして捉えていきます。有名な彫刻家の船越桂さんは、同じく彫刻家である父の舟越保武さんに「木炭デッサンはゴシゴシ描け。」と言われたそうです。実感の伝わってくる作家の言葉ですね。



二日目終わりの中間講評。みなさんゴシゴシとトーンがのせられています。


三日目は金属と布の質感の違いもこだわって描き込みます。椅子に映るグレープフルーツなども描き込まれています。


白い布と黄色い布、緑の葉っぱなどモチーフの固有色をデッサンで表現していくこともこのスクーリングの醍醐味になります。



合評風景

 物と物との距離感、空間を描く。モチーフの固有色をトーンで描き分ける。
そこらへんが今回の静物木炭デッサンを描く「理由」と言えます。しかしモチーフ(理由)が同じでも出来上がる作品は実に多様で、物理的な距離感や色味感だけでなく、作者が感じた距離感や色味感が実感として画面に表れてきて初めて、絵と呼ばれるものになるのだなと感じました。
 木炭の擦り込み方や空間の捉え方など、30人以上のお互いの作品に刺激を受けて収穫の多い三日間となったと思います。




(報告:由井先生)

※先生方、受講生の皆さんご苦労さまでした。でもスクーリングも何度目かになる方が多いせいか、なんとなく美大生がさまになってきているようです。勿論仕上がりという点では満足度はそれぞれかと思いますが、こうして途中経過を見せてもらう限り「描かなければ何事も始まらない!」といった風に見え頼もしく思えます。
 船越保武さんの「木炭デッサンはゴシゴシ描け!」とは名言ですね。そうです、ゴシゴシ描いているうちに、描き方のみでなく、見え方も変わりだし、仕上げのイメージも見えてきます。
 何よりもたくさん手を動かし、たくさんの失敗を重ね、多くの作品に接していけば次第に皆さんの能力は開花していくでしょう。途中で放りだせばそれまでのことですが、どれほど打ちひしがれても、信じて続けていったものだけが描き続ける権利を得るということかも知れませんね。また顔を上げて頑張ってみましょう。(Y)




2018年6月22日金曜日

京都スクーリング3年次「人」の報告です。

4年卒制50号中間報告にひき続き、
つい先日まで行われた3年次スクーリング課題「人」の報告が富士篤美先生から届きましたのでお知らせします。

5月25~27日前半、6月15~17日後半

で、三年次「人」スクーリングを行いました。

三年次からは自由制作がはじまり、その手掛かりとして「人」をテーマに制作を進めていくスクーリングになります。
前半は絵の構想を練り、後半は下絵をもとにタブロー(本画)の制作を行います。
まずは前半。
取材をし、自身のテーマを探しながらアイデアを絵にして行きます。「
人」にそった作品制作ですが想いはそれぞれ。
人と風景の関係を描く方もいれば、人の内面や感情、あるいは、人の形そのものの造形性へ興味が向かう方もおられます。






描くと見ると考えは連動しています。描くことで自分の興味点を探っていきます。
 



写真からの取材だけにとどまらず一度絵に描いてみます。




取材成果の数々
        
            


 
エスキース段階ですから、タブローに向けて何が不足しているのか、どうしていくかの方向性をお話ししました。

キャンバスに絵具を塗ってしまえば絵はそれだけである程度できてしまいます。

しかし塗っただけで完成して良いのか?と疑問も湧いた方も多かったことでしょう。
情報が少ないとなんとなく塗っただけの絵になりかねませんから、エスキースの段階で情報が不足している点も探しておきたいものです。



ここから後半。タブロー制作です。

二週間ほどのインターバルがあり、その間ウズウズしておられた方も多かったのでしょう。
皆さんさっそくタブローの制作に取り掛かりました。









ミニ合評かな??
学生さん同士の意見交換も大事ですね。




合評会。
言葉にすることで、自分の絵の主役となる点の確認となればと思い今回はタイトルをつけてもらいました。
今回は「人」のテーマで制作していただきましたが、このテーマに限らず様々な制作において必要な制作手順かと思います。
作品を完成させることよりスクーリングでは自身の視点をみつけ、制作の下準備や情報不足をどう補って行くのかを学ぶことの方が大事かと思います。
特に「人」では取材の大切さを実感していただけたかと思います。
見ること(モチーフ探しとも言える)から制作を始める意識を持っていただけた
かと思います。


富士篤美先生。スクーリング報告ありがとうございました。
全員の集合作品はこれ以上大きくならないのですみません。

よおく見れば、なんとなくコミカルで人々の表情も豊か。
エスキースを重ねる事で、その中身をまた新たな視点でトリミングすると絵画が増幅してどんどん出来上がってきます。この勢いで次のテキスト課題も進めてみて下さい。
卒制を受講されている顔ぶれもちらと見えます。皆さんえらいなあ。(K.)