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2016年6月29日水曜日

展覧会報告など

 昨日から4年担当の相見節子先生の個展が京都のギャラリー恵風で始まりました。
大学からも市バス204番乗車、熊野神社下車と近く、美術館からも歩いていけるよい地理にあるギャラリーです。
遠方の学生のために展覧会を紹介しましょう。今週日曜、7月3日まで。
(最終日は午後6時まで)


使われている色彩は赤と緑のみ。
タイトルにもspace  G.&R.と記載されています。
相見節子氏の作品にはどこか振動音がするような気配がありますね。


でもひょっとして、この作品のみ私のカメラが焦点をキャッチできていないかもしれません。
節子さま。お許しを。




作品部分。色彩や線に眼をやると、いろんな形が見えてきます。











白い壁に囲まれた作品。
緑と赤の色彩が絶妙なコントラストを醸しています。
テーマは風景。space。空間。そして赤と緑。

油絵の世界で常に私たちの視野にある空間という問題をどのように捉えるか。

作者相見節子氏は「風景画」について、
「いずれにせよ選択肢があまりに多いので私の場合、
答えを探すには前提となる条件を絞り込むに限ると制限をかける。
画面に探すSPACEとは記憶と同義で、
そして幸福の有様と似ているのかもしれない」

……。

この考え、私にもあります。
相見先生と表現は全く違いますが。よくわかるような気がします。


我が洋画コースにはさまざまな先生たちが指導されていますが、
展覧会やその他にも、いろんな制作媒体を用いて、ご自身の表現を探っています。
教師がその立場を離れ、画家として、表現者としての真剣勝負の現場をぜひ訪ねてみましょう!

さてもうひとつ。昨日アップされていた1年次の牛頭骨の鉛筆デッサン担当の由井武人先生の制作を紹介しましょう。これは展覧会ではありません。


6/10-123日間、大阪国際会議場「第61回日本透析医学会学術集会・総会」で、
本学4年生・杉本昂太さんと3年生・駒居隆志さんがデザインしたオリバー社ブースが展示されたそうです。
外装のステンシルアートは通信教育部・由井武人先生の作品です。


このメカニックなブースは何だと思われますか?
タイトルにもあるように、
人口透析患者さんのための場として提案され空間なのです。



このブースのデザインは本学のデザインの学生なのですが、この絵は由井武人さんの制作です。
ステンシルを使用して自らの手で描きました。
患者さんに優しい環境を用意できないかと考え、
画面の左図は木蓮の花だとか。右図は木漏れ日を思わせる樹木の風景ですね。






 透析患者さんが人口透析にかける時間は大変長く、
しかも一定の空間でじっとして過ごされるそうです。
その限られた空間を少しでも患者さんの気持ちに添って、その負担を軽減できないかとというコンセプトで、
このような空間が考案されました。




制作者の問題だけではなく、鑑賞者が感受する見る側の問題も感じるこの頃です。
このように患者さんのために具体的な空間の場として絵画が果たす役割も大きいですね。
(K.)


京都一年次該当スクーリング報告

 卒業生の方の活躍目覚ましいですね。
石川さん受賞おめでとうございました。
また、門田さん、岡本さん、阪田さん団体展を超えての研鑽いいですね。
時間がなく伺えず申し訳なかったですが、力作揃いだったようで更なる活躍が楽しみです。

 さて今回は、東京の牛骨デッサンに引き続き京都で行われた同スクーリング報告です。
由井先生報告ありがとうございました。

洋画Ⅰ-1《牛骨鉛筆デッサン》 


6月17(金)~19日(日)  担当:由井武人先生


「眼をつくる」


 京都の瓜生山キャンパスにて6月17日から19日の三日間、牛骨鉛筆デッサンの授業を行いました。
 入学後初めてのスクーリングの方も多く、夏の初めのこの科目はなかなかの緊張感の中でスタートします。しかし私はこの期待と不安と初々しさが何とも言えないバランスで混ざった「初心」とも言えるこの雰囲気がわりと好きです。何かを始める前のワクワク感がいいですね。
 さて、このスクーリングでやるべきことはいたってシンプルです。
「見る」というよりも、より深く「視る」。


 形を視る!


明暗を視る!


角を視る!


 三日間、朝の9:30から夕方の17:40まで、皆さん高い集中力と意欲でとても充実した内容の制作をされていました。
 合評は、三日間で雰囲気も打ち解けて和やかな楽しい時間になりました。




 初めは牛骨の角の反射光など本当に見えるのだろうかと思いますが、言われてから見れば視えてくるから不思議です。デッサンというものは見えているものを描くというよりも、描くことによって視えるようになるものなのかもしれません。

 散歩をしている時に、自分が美術をやっていなくてもこの風景は同じように見えるのだろうかと思うことがよくあります。結果としての作品以上に、私たちは絵を描くとことを通してこの世界をより深く、そしてより豊かに味わうための眼を作っているのかもしれません。






 皆さんおつかれさまでした。

そしてここからが本当のスタートですね。一枚一枚自分なりに楽しみながら積み重ねていってください。こちらもテキスト科目やスクーリング科目でまたお会いできるのを楽しみにしております。                          

(報告:由井先生)

見たものを描く、課題はシンプルですが考え出すと難しいですね。
 それが、単なる技術習得のみでない学問の面白いところでもあります
 
 由井先生の意見はオスカー・ワイルドの「自然は芸術を模倣する」というとんでもないアリストテレス説への逆説の説明にも繋がりそうです。
 実はそれぞれに見え方も感じ方も違っているのに、絵画や写真などの芸術という共通の尺度を基本に、ものや風景を見ている可能性も大いにあるかもしれません。

ともかく、由井先生、皆様お疲れさまでした。(Y)



2016年6月23日木曜日

卒業生展覧会のお知らせと報告

山河先生。西宮大谷記念美術館での展覧会案内をありがとうございました。
梅雨の時分ですが、雨にぬれたお庭はとても素敵です!ぜひおでかけくださいね。

さて2013年度卒業生の石川清幸さんから嬉しいお便りが届きましたのでお知らせしましょう。

絵の現在 第42回選抜展受賞発表展
2016.6/27(月)~7/9(土)
ギャラリー一枚の繪
東京都中央区銀座6-6-1凮月堂ビル3F

075-3575-0123






石川さんは卒業制作では桜をモチーフにしながらも、次第に抽象的に変化して濃い青とピンクの色彩が重厚で精神的な画風になりました。今回は案内状で拝見して「蓮」が描かれていますね。色彩は石川さんの得意な青と薄ピンク。伸びやかに素朴に描かれています。銅賞受賞おめでとうございます! 初日16:30~授賞式とパーティーが行われるそうです。近くの方ぜひいらしてください。


もう一つは以前に紹介して、今週火曜日から開催されている江ノ子島文化芸術創造センターでの「FOUR展」から。
今年大学院修了の門田冨美子さんや、同じく少し前に修了された坂田茂子さん。また本祐介さんが出展されています。
皆さん実に堂々と、大きなサイズで出品されていてスケール感のある見応えのある展覧会でした。

FOUR展
江ノ子島文化芸術創造センター
6/21~26

門田冨美子さんの作品


門田さんは150号4点出品されていました。これらは修了されてから描かれたのでしょうか?
色彩と形態が引き締まって、黒(紺色?)がぐっと動勢感を促します。
モノクロームにも見えるコントラストの中で黄色や青の色彩が際立ち思わず見ほれました。

坂田茂子さんの作品


坂田さんは以前新制作で拝見しましたが、透明感のある色彩に加えて水のようにもみえる歪みが視点の揺らぎを与えて楽しめます。絵画って不動のものであるからこそ、作者は様々な工夫を凝らすのですね。



こちらは岡本祐介さんの作品です。大日如来?でしょうか。
難しいテーマを豊かに油彩で表現されていますね。



他にもお二人のメンバーがおられました。
2年に一度のグループ展だそうです。
造形代の卒業生が行動展や新制作展、主体展など様々な公募展で研鑽し、またそれらを超えて交流して刺激を互い与え合ういい展覧会でした。26日(日曜)まで。(K.)

展覧会レビュー

 さて今回は、教員展の展覧会レビューです。
せっかくの川村先生のいままでを振り返る大きな展覧会ですので、遠方の見られない方のためにも報告しておきます。

 6月21日梅雨の晴れ間をぬって、西宮大谷記念美術館で行われている川村悦子先生の個展と、大阪ギャラリー白でおこなわれている、昨年度まで抽象を担当していただいていた、中島一平先生の個展をみてきました。
 京都は朝のみ雨が残っており少しムシッとする感じでしたが、西宮の阪急夙川駅を降りた頃はまるで真夏のような暑さで、大阪はそれにも増してけだるい夏の様相でした。

《川村悦子展報告》 6.11-7.31 西宮大谷記念美術館

 駅は阪急電車の夙川駅で下車、大阪からですと阪神電車の香櫨園が近いのですが、私は京都から便利な阪急夙川の流れを横にぶらぶら歩き、15分もすると到着しました。


このあたりは裕福なのでしょうね、のどかで落ち着いた雰囲気でした。
禁煙条例なのか、街路に吸い殻一つおちていないというか…


ベネチアビエンナーレで有名になられる前の藤本由紀夫先生の展覧会以来、
本当に数十年ぶりの同館訪問でした。


今回は特別に写真可ということです。
最初の部屋は近作のドローイングなどの制作過程を含めた「公園」を主題にした作品群。


宝塚からこられた学生さんが熱心に見ておられました。


一室目の終わりあたりから、蓮の連作が続きます。


二階の第二室ガラスケースには蓮や葉牡丹の連作、襖や屏風、掛け軸といいった和の設え


細身の掛け軸郡


屏風や襖には箔なども試みられており、川村先生のあくなき創作実験が感じられます。


この作品などは、洋と和の間で揺らめく不思議な感性が感じられました。
これ私は好きですね~とても強い!


ご覧ください、この大胆な銀箔の扱い方!私にはできません。


第三室はイタリア滞在後の作品群。


ベッリー二やジォットの引用や、自作との比較画面が面白いです。


大胆な筆遣いとの自作比較など、こんな遊びごころも…


奥の樹の描き方は省略ではなく、川村流独特の消し方です。


三室の向かい側には懐かしい初期の作品群が並びます。


こちらは、イタリアではなくスペインでしたっけ?
曇りガラスの窓越しにのぞく風景といった風情の絵画連作です。


第四室は至ってシンプルに小品の椿と小道の作品。


これらは近年の川村先生の心境を物語る作品なのでしょうね。


以上がほぼ全容です。少しは味わっていただけたでしょうか?
階下のロビーからは瀟洒な庭園が望めます。


入口外には回遊式で庭園を鑑賞できる小道がのびています。

さて、私たちも幾度となく見せてもらってきた作家川村悦子さんの作品ですが、
こうして回顧展形式で拝見するのは初めてのことでした。
よく見知った作品群を順に見せてもらうと、その時々の興味に応じ
その試行錯誤を正直に表現に活かす絵画への前向きさを感じます。
西洋的具象と和の平面性の間…

映像だけでは現代的写真表現のように思えますが、
間近でみると、画面の端々まで描きながら削り出していく
川村先生独特の細かなマチエールに対するこだわりが垣間見えます。

これからご覧になる皆さんはどのように感じられるでしょうか。
7月31日まで

(水曜休館ですので気を付けて/7月18日のみ無料)

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《中島一平展報告》 6.13-25  大阪ギャラリー白  

 さて、こちらは馴染みのうすい方もおらるでしょうが、昨年度まで抽象の講座を担当していただていた中島一平先生の個展です。念のため、東京の総合科目の中島先生ではありません。

 大谷記念美術館を出て、今度はすぐ近くの阪神電車香櫨園駅から一路大阪梅田まで…
その後は、お初天神商店街をひたすら南に下り老松町にあるギャラリー街へ、西宮に増して暑い
ことこの上なしでした。

 中島一平先生は若かりし頃より「絵画の解体と構築」といった問題に向き合う理論派で、大きな賞をとられた後も、黙々と抽象絵画と向き合い、自身のあり方を模索している方です。
 私は見ていないのですが、昨年一昨年とウォールペイントと称する巨大画面を神戸で公開制作されています。これがカッコいいのですが、今回はギャラリー展示を紹介します。


絵具の色数を制限し混色をする、中島一平先生のクレー式・コンポジション


最少の色で刷毛のストローク数も制限したドローイング


色とストローク回数の制限の中でのペインティング


最近とみに斜めのストロークや菱形がモチーフとして出てくるようす。


なんかウォールペイント以来はじけてますね~
リヒターやセザンヌも飛び越えているようです。


極限まで工芸的な要素は省かれ、筆跡そのものも楽しまれている様子。
ベニスのグッゲンハイム美術館で見たロベール・ドローネーを思い出させます。

かいつまんで勝手な感想などを書き連ねましたが、中島先生!ご覧になったらごめんなさい。
しかし、いつまでも若々しい感性で挑む中島先生の姿勢にいつも勇気をいただきます。
暑い中を歩いた甲斐があり、なにかしら涼風にあたったようで絵はいいな~と思った次第です。

6月25日(土)まで(大阪のギャラリーは日曜はお休みですのでご注意のほどを!)

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以上

私にとり、全く違った展開をされるお二人の先輩作家のレビューでした。

 ものの好き嫌いは、鑑賞者の経験量や感性によっても違いますし、勿論のこと作者も様々な影響下で揺れながら変化しつづけます。
 簡単に両者の嗜好性といってしまえばそれまでですが、きっといつまでも朽ち果てぬ原体験のようなものがその底流に流れているのではないでしょうか。
 みなさん一人一人にも必ずその原体験があり、それがそれぞれの絵画を描く・鑑賞する支柱になっているのだと思います。
  自分もそうありたいし、絵画を目指す皆さんには、このお二人のように自信を持ちそれぞれの絵画を見つけていってほしいものだと思いました。(Y)