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2016年8月3日水曜日

外苑キャンパススクーリング報告

 一年次該当東京スクーリングの報告です。
前半三日間は人体クロッキーや人体デッサンを安冨先生から、後半三日間は人体油彩を小林先生から報告いただきました。
 暑いさなか、先生方、受講されたみなさまお疲れ様でした。


《洋画Ⅱ-2 人体油彩Ⅰ》

前半:7月22(金)~24日(日) 担当:安冨洋貴先生
後半:7月29(金)~31日(日) 担当:小林良一先生

■前半

 722(金)~24日(日)の3日間、東京外苑キャンパスにて「人体油彩1」の前半日程として人体ヌードのクロッキーと木炭デッサンを行いました。
初めにクロッキーを10分、5分、3分でそれぞれ複数枚描きました。 短時間で対象の全体を把握し、骨格と筋肉の動きや重心の偏りによって成される人体の有機的なラインを意識し描きます。 
最初は線を引くことに躊躇も感じられましたが、徐々に、見て感じ発見したことが手に伝わり、大きく、自在に手を動かせていました。



 1日目の午後からは固定ポーズで木炭デッサンを行いました。 描くのは固定のアングルですが、一ヶ所から見ただけでは、モデルさんのポーズの全体像や各部位の位置関係を把握し難い場合も少なくありません。なので先ずは、違うアングルからの描写も含めてクロッキーから入ることを勧めました。
描き始めてからも、人体の正中線と背骨の流れ、骨盤と肩の向きや角度などを意識して、直しながら描き進めます。 木炭は描いたり消したりし易い画材ですので、積極的に行えると思います。


 モデルさんがこのポーズを成り立たせるために腰や肩、脚では左右のどちら側に重心を掛けているのか、また、腕や脚や腹ではどちら側を縮ませ、また伸ばすのか、肩や腰の回転する向き、背骨が傾く流れ・・・・・、こういった事もただ見ているだけでは案外、意識できなかったりします。 そこで自身でもモデルさんと同じポーズをしてみますと、それを追体験とともに理解する助けになります。
途中、描いているのとは別の位置から対象を見て構造を確認します。また、人体の面を大きな明暗として捉えていきます。



 空間の中における各部位の前後関係を確認し、トーンの調整をしながら、最後まで骨組みを意識して描きます。プロポーションの正確さだけではなく、体の芯、繋がり(関節)、重心、向き(ひねり)、張り、弛み、といったムーブマンを捉えて、修正し続けます。僅かなムーブマンを積極的に汲み取る姿勢が求められます。


 骨や筋肉が稼働し、各部が様々に角度を変えることで無数のフォルムを見せる人体は、ただ見えている輪郭線や明暗を写し取るだけでは成立しません。 重心の位置や動きの流れなど、実際には見えない要素を積極的に汲み取ることで、人体はより自然な姿として表れます。

 また今期間中には、同科目の後半日程で使いますキャンバスを、自分で張る実習も行いました。 キャンバス、木枠の他、タックス、キャンバスプライヤー、ガンタッカーといった専用の道具の使い方を説明しながら進めました。
 これから画を描くうえで、材料の面でそれを下支えしている基底材の組み立てを通して、自身の想い描く画はどのような材料で描くべきなのか、という興味へのアプローチとなればと思います。

今回の実習では、経験者が初心者に積極的に手を貸すなど、学生同士が協力しあっていた姿が、印象的でした。

(報告:安冨先生)


■後半

一日目

 東京もようやく梅雨が明けて、縦方向に立体的な雲が浮かび神宮外苑の蝉も勢いがあります。夏のスクーリングらしい天気です。


人体油彩はF30号のキャンバスに描きます。油彩の経験が少ない人には大きく感じるかもしれません。


最初にクロッキーをして、それからF30号と同じ比率の紙にエスキースをしていきます。この時、構図とか背景はどうしていこうとか、いくつかプランを練っていきます。そしていよいよキャンバスへ。

 二日目


 絵具がのり始めてくると、画面上にいろいろなことが起こります。思い通りにいかなくても、粘って、粘って、そして時には、大幅な画面の変更もありです。

 「人体とその人体のいる空間とを同時に意識しながら制作を進める」言葉では一行くらいのことですが、これはなかなか難しいですね。でも経験を積んで実感として理解していければ、絵画の世界は大きく広がっていくはずです。




 二日目の終わりには、壁にかけての中間講評。明日の最終日に何をしればいいかを個々の課題を明確にします。


三日目

 細部を描いて仕上げようとするのではなく、最後まで人体の自然な立ち姿や空間のありようを意識した制作を続けます。講評会の風景と皆さんの作品です。








 なお今回は3年次のスクーリング「人」と同時期の開催でしたので、担当の津上みゆき先生からも講評コメントをいただくことができました。

(報告:小林先生)

前半の安冨先生、後半の小林先生ありがとうございました。お疲れのでませぬよう。

 美術科も異分野三年次編入学が始まり、洋画でもwebシラバス化に向けDVD教材なども配布しています。通信教育部も色々と新しいことが始まっているので、何かと質問もあるかと思い前半中日に一年次科目担当の私も面談に外苑キャンパスを訪れました。
 面談の合間にのぞかせていただくと、皆さんしっかりと勉強されている様子でした。基礎科目のデッサンや人体は何年やっても難しい科目、うまく見せようとするより、楽しんで多くの発見をしていただければと思います。東京も遅めの梅雨が明けたようです。これから盛夏に向かいますので、十分身体に気を付け絵画の面白さを発見していって下さい。(Y)