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2018年11月13日火曜日

東京スクーリング報告

 少し前になりますが、東京の山本・小牟田両先生から二年次配当静物油彩Ⅱスクーリングの報告がまいりました。いつも私が担当していたのですが、今年は若手教員にお願いすることになり、幾分か新鮮な息吹が加わったものと思います。

《洋画Ⅳ-1「静物油彩2」》


前半:10月5日(金)~7日(日) 
後半:10月19日(金)~21日(日)  


前半担当:山本努先生、小川万莉子先生

外苑キャンパスにて30名の学生さんが集まり授業を行いました。
前半、後半と2部構成で行われます。後半の油彩制作に向けて前半では、そのエスキース制作となります。

授業内容としては、対象を写し取ることから絵画をつくるという行為に移行または展開の段階かと思います。



 そのために油彩のマチエールや色彩、構図という要素に注視し、今後探られる自己表現とは何かという事柄について、コラージュというフィルターを経ることで表面的な思惑から深度を持た表現に繋がればと思います。
そういった意味で具象と抽象のような概念的線引きというよりも自身にとってリアリティーある表現の種を見つける時間かもしれません。



前半1日目では巨大な棚壁モチーフをスケッチによって制作する場所やトリミングによって構図を決定し、鉛筆デッサンを行います。
一見無作為に作られたモチーフのようですが、ある程度どこを切り取ってもバランスが保てるよう組んでありますので、やってみれば描けると思います。
実際1年春先の牛骨デッサンの際に初めての制作といった方もこの段階では遜色のないデッサンを描かれていました。


2、3日目では対象を写実的に再現する(しやすい)デッサンから創意工夫が求められるコラージュに入ります。自己解釈の枠を解体し、素材の持つ力から柔軟な発想に展開、再構築することが必要かと思います。上手くいくかどうかよりも制御、想定不能な状況をどうのように楽しむか、イメージ上の力学の中でゲームを創っていく入り口かと思います。不確かな自己を守り過ぎると苦しいですが、解き放つことで見えてくることがあると思います。
後半の油彩でさらに引き継いて頂ければと思っております。(報告:山本先生)

  
●後半担当:小牟田悠介先生、小川万梨子先生、田中愛子先生

後半は、前半で作ったコラージュを油絵に描いていきます。






透明色、不透明色の絵の具の特性、絵の具の重ね方による違い、参考作品を見ながら隣り合う色による遠近の作り方の例を見ながら始まりました。





 この課題もモチーフスケッチエスキース油彩といういつもの流れですが、
コラージュならではの制約、素材感を油彩にして行くことにはじめは戸惑われつつも、少しづつ乾性油の調整や、速乾メディウムも試しながら描き始めました。





 だんだんと色が重なったきました。同じ色調でも重なりによって生まれてくる物質的な抵抗感がリアリティーに繋がります。
筆をいくつも持ってそれぞれに違う色をつけて、そうすることで見ているものから目を話さずに描くことに集中できるようになります。
距離をとって描けるように油彩の筆は長いのですね。筆はたくさん必要になってきます。




 複雑な網の目や、布の柄などもじっくり描いていきます。一度描くと決めて物の有様そのままに筆を動かしていくと
積み重なってそのものらしさが出てきました。


2日目は、絵の具の乾き具合を心配しつつ、半乾きの絵の具の上に筆をいて色を作っていく感覚や透明色の使い方を存分に体感してもらえたのではないでしょうか。
いつもながらかなりの集中力で皆さんエスキースとキャンバスを視線が行き来しています。ここまでくれば次にどう色を重ねるか、どの手順で描くかに気づいている様子です。



3日目
どんどん細かい表現を見つけることができてきて、影の色、隣り合う色の響き合いを意識できています。一方で細かい作業だけになると絵が小さくなってきたり、ギクシャクした雰囲気になりがち。
大きな筆の動きや、時には削ったり、印象が違うところはしっかりと塗り替えたり、形を
見ることも最後まで続けていっています。



並べてみると力強い中に繊細な表現の光る秀作が揃いました。
授業始めとは思って見なかった油絵の具の経験をしていただけたのではないでしょうか。
これから自由制作にむかって進むにつれて、今回のような課題を見返していただきたいです。


自分では気づいていなかったご自身の持つ良さや質感や重なりを画面から教えてもらえるかもしれません。

お疲れ様でした。(報告:小牟田先生)


※先生方、受講生の皆さん。本当にお疲れさまでした。

 30人もおられると出来上がりは壮観でしたでしょうね。中には何が何やらよくわからないといった感想もあると思いますが、実はこれが後々の他者に見せる表現をしていくうえで、とても大切な要素になってきます。

 少なくても表現とは描くことだけでなく、造形要素が魅力的な画面作りにはとても大切だということは、頭ではある程度理解はできたと思いますが…そうなのです。今まで写実的に描けることが何より素晴らしい絵画表現だと信じてきている心は、中々納得してくれないものですね。判っていてもよく解らない?のが実感だと思います。

でも、疑問に思い続けていれば、やがてきっとわかるようになってきますので、今回のとんでもない作業が一体なんだったんだろう?と頭の片隅には残しておくようにしてください。そうすればきっと卒業までには「はっ!」とする瞬間がやってくるでしょう。

 さて、ここからは技術力を磨くだけでなく、絵の魅力とは何か、豊かさとは何か?ということを考えていくレベルに入っていきます。
解らぬなりに技術を磨きつつも、展覧会などで好みでない絵を見過ごさず、感じる作業も大切にしていって下さい。(Y)

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あっ、そうそう。先週はとっても忙しかったので、とても紹介できませんでしたが、至るところで芸術の秋!展覧会のオンパレードですね。
京都でも、空いた時間に少しずつは回るようにしていますが、全部が全部回れずに申し訳ないと思っています。

 奈良での個展についで、奥田先生が春にやられた堀川紫明上がる淡交社のお隣の同じ場所でドローイングの個展。街中ではヒルゲートギャラリーで新制作の会員小品展。新会員の甲斐さんも出しておられました。
 押小路御幸町のギャラリーtake2では大学院生たちが…





木屋町三条上るのギャラリー中井では、1期生の岡本裕介さんが例年開いている個展。
彼は主体美術の会員なのですが、団体展以外にも毎年大きな作品がたくさん並び、本当に頭が下がります。

兵庫県では前出の「マーブル展」、新制作展などがメジロ押しでしたが、行けずにごめんなさ~い。ゆっくりと写真を撮る暇もなく本当に申し訳ありません。

もう随分経ちましたが、泉川博之さんがZERO展大賞受賞の副賞として大阪天満で個展をされていました…すっかり撮影したのも忘れておりました。ごめんね。








所せましと並んだ小品群は、本当に絵が好きなんだな…と感じさせてくれました。
アップ遅くなってごめんなさい。(Y)