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2021年5月29日土曜日

洋画Ⅲ-2K1 「風景を描く」スクーリング報告

  コロナ禍が一年以上続いていますが、皆さんご無事でお過ごしでしょうか。日本も遅々としていますがワクチン接種が始まり各方面で加速すべく努力はなされている模様です。もう少しの間自粛という形で頑張るしかありませんが、くれぐれも気を付けてお過ごしください。

 さてその中で京都では2年次配当「風景を描く」スクーリングが行われ皆さん元気に挑戦していただいた様子。担当の水口先生より報告をいただきましたので掲載させていただきます。

 今年度よりスクーリング表示が京都はK、東京はTという風にくっついており多少戸惑いますが、番号だけよりわかりやすいかもしれませんので慣れて下さいね。


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2年次スクーリング報告

洋画Ⅲ-2 K1「風景を描く」

2021515日[土]・16日[日]/京都キャンパス

担当:水口裕務先生


  受講生の皆さんおつかれさまでした。案じていた緊急事態宣言のなか対面で授業できたことを互いに喜び、雨もさほど問題なく爽やかな屋外写生を楽しんでもらえたと思います。

教室では学びようのない大きな対象に挑んだことで、360度ビューから画面をどう切り取るか、視点や構図の問題、遠近空間の明暗や色彩をどのように平面に置き換えるか、解釈と表現の実際問題など、これら造形意識の広がりが収穫といえます。

併せて今回は油彩タブローや木炭デッサンとは趣を違える簡便なスケッチ材料を用いたことで、ボールペンの潔いメリハリや水彩の軽妙な瑞々しさなどが再発見され、よく知る手法にも広がりがみえてきました。

  さて、一括りに風景画題とはいえ捉え方はさまざまですが、ここでの題意はモノ自体の説明再現に留まらない風景全体の空間表現を第一義としました。言い換えれば主たる対象は圧倒的な幅・奥行き・高さを持った空気の箱であり、内在するモノとしての木々や建物は画面を形づくる造形要素として考えます。これら諸要素に天空からの光や遠近に伴う空気の厚みが作用するようす、その見え方や在り方を整理して適切な形やトーンに置き換えていけば、自ずと画面上では目に見えない空気や臨場感が感じられることになります。



具体例として制作現場をみておきます。本学周辺の眺望ですが、手前の木々(近景)、平坦な街並みの連なり(中景)、向こうの山並みや雲(遠景)、なるほど特段絵になる対象物は見られません(そこがよろしい)。ここで惹かれた対象は空間そのもの、5月曇り日の空気感か、時節柄平穏な日常を祈る思いもあったかもしれません。

参考まで各所の距離を測ってみました。その遠近は数十~数万mに及び、雲は案外低く、時折のぞく空の高さは宇宙までは抜けていなくて50~100km位、一見平板なパノラマ風景もたっぷりの空気塊を意識して立体視すれば表現たり得るドラマがみえてきます。



いざまいらん

 

 京都キャンパスは起伏に富み人工物と自然が共存する、それぞれ2日間の居場所を決めた


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 授業日程と課題内容

1日目:導入・小講義、場所決め、制作11:0017:00(巡回中事前課題点検)、講評会 「素描」鉛筆orボールペン(ボールペンを推奨)/ 曇時々薄日、実制作5時間


2日目:水彩ガイダンス、制作10:0016:30(原則同一場所)、講評会
「水彩画」透明or不透明水彩(鉛筆・ペンの下描・上描可)/ 雨一時曇、5.5時間



受講生12名「素描と水彩画」全24作品(順不同)


1日目講評会「素描」

 


2日目講評会「水彩画cf.素描を添えて」

 

 事前課題のこと

風景画題へのアプローチとして10点のプランを写真取材、プリント提出、写真技術の巧拙は問わず。作品化を意識した構図や明暗・色彩構成の絞り込み不足とともに主題の曖昧な趣味的スナップも多々ありましたが、総じて良好な取り組みでした。個別巡回中にそれぞれ何に惹かれたのか、作品化の可能性などをアドバイス、後に23点を本人選出、教室壁面に掲示し、イメージを共有しました。



終わりに

体力的にも(教員とも)たいへんな2日間でしたが手法を替えての2連作いかがでしたか。実際のところ僅か5時間で8号画面を密に埋めるのは容易くなかったようです。

今回は平板な画面から立ち現れる3D的風景空間を求めてきましたが、まだ現場の実感といった目に見えない思いを造形する段ではなかったかもしれません。

この先豊かな造形性を獲得すれば自身の心情や思想を醸し出せると信じ、技術的な裏付けを研く一方で自分らしい視点を探っていくことを日常としてください。

3年次へ向けて飛躍を期待しています。

(報告 水口裕務先生)


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皆さんの風景を描いた場所や、本学瓜生山からの眺め、それぞれの距離など、よく見るととても分かりやすいスクーリング写真です。水口先生時間のかかる丁寧なブログ原稿をありがとうございました。
皆さんも屋外での風景スケッチ、いつもとは違った空気を感じ新鮮だったのではないでしょうか。
それにしても1日目のボールペン素描はおっかなびっくりでも結構皆さん描けるのが通常。2日目の水彩が意外と手こずるものですが結構しっかり色が乗っていますね。きっと指導と皆さんの取り組みがうまく噛み合ったのでしょう。
水口先生、受講生の皆さん実のあるスクーリングご苦労さまでした。(Y)

2021年5月28日金曜日

5月のYouTube 後編

皆さんこんにちは。奥田先生の動画後編がアップされました🌜🌛

動画では実際の作品制作の様子や、自作の中にある「遍在」についてのお話が収められています。ご覧くださいね☺

https://www.youtube.com/watch?v=fMUDzVEo4Qw

2021年5月24日月曜日

1年次科目 「牛頭骨鉛筆デッサン K1」スクーリング報告です。

  2021年度のスクーリングは3年次科目、卒業制作、大学院とすでに始まっていますが、いよいよ新入学生が中心となる1年次対面授業のスタートです。

 洋画コースの授業は様々な創作の基本、造形の基礎学習といっても過言ではありません。絵画に限らず造形分野で人がものを作る時、誰かに何かを伝えたい時、最も原初的な方法は絵画表現です。そしてその基になる学習は観察描写です。



 この授業は「牛頭骨」を鉛筆で描く実習です。教室に配置された牛頭骨を描くのですが、単に描くと言っても対象(モチーフ)をどのような視点で見る(観察)するのかが大切です。その視点を解説するところから導入は始まりました。



 まず使用する素材について。今回は鉛筆と画用紙です。画用紙の上に鉛筆の芯が削れてどのように定着しているのかなど少し詳しく解説します。そして鉛筆の削り方、モチーフに当たる光と影の関係、うまく見せるための置き方、など少し踏み込んだ説明をして1時間目が終わりました。

 2時間目からはデッサンです。しかしその前に画用紙にどのように入れるのか、つまり構図について考えてみましょう。たとえモチーフが一つであっても光の方向や机や台の上に落ちる影の関係から画用紙にどのように牛骨を配置するのがいいのかを考えるのです。これは将来必ず常に気にすることになる構図の学習の第一歩です。そのためにざっくりとしたクロッキーをして、木炭紙大(50×65cm)の画用紙に牛頭骨をどう配置するのかを決めます。 



 さて描き始めます。クロッキーを基に画用紙におおよその大きさや形、特に視点の一番端、上下左右の牛頭骨の端はどこかを考え、有機的なモチーフですが直線的な捉え方をします。細部は気にせず大きな量感を光の明暗のバランスや、最も明るいところ、最も暗いところを探します。鉛筆デッサンは繊細な線が描けますのでついつい細部が気になります。我慢して大きな明暗を目を細め取り、どんなボリュームを持ったモチーフなのかを見極めます。少しずつ細めた目を開いて行き、徐々に描き進めます。大きな面、中線(牛頭骨はおおよそ左右対称です)の位置、など構造的にモチーフを観察し少しずつ細部まで描き進めます。



ここから8〜9時間 画面と向き合い、モチーフをじっくり観察し、みなさんそれぞれに完成(まだまだ描けそうでしたが時間切れ)させました。




 はい完成とはいかないまでも2日間お疲れ様でした。腕を上げて描くだけでも疲れます。人によっては立ったまま制作された方もおられました。いろいろ見つけるものがあるとデッサンにかける時間は徐々に長くなります。何度か描いていくと、目を動かさないこと、姿勢が大事であることが分かってきます。デッサンする姿勢を見るだけでその人の経験がわかります。そして、牛頭骨を見る目に愛が備わってくれば傑作ができる事間違いなしです。




 最後は合評で締めくくり。
 今回の担当は西垣肇也樹先生でした。2日目は助っ人の富士篤実先生も登場して指導と合評をされました。みなさん熱心に拝聴されていました。合評は自身の作品のことだけではなく人の講評にも大切な言葉がたくさんあります。デッサンは描くことが最も重要ですが、言葉として覚える事やものの見方、探し方も発見できます。



 デッサンには観察が必要です。観察は発見につながります。発見すると嬉しくて描きたくなるのです。一つの対象から色々なものが見えてきます。普段のものの見方は、これは何か、と言う確認、そこにある事を確認するだけのことですが、デッサンするとそれがどのようなものかを理解することになります。機能は別にして、立体としての構造、重さや材質感、表面のテクスチュアー、所謂特徴を発見します。デッサンすることで今までになかったものの見方ができるようになる、つまり様々な気づきが生まれます。手元にある本一冊瓶一本、花一輪をデッサンしてもその構造や素材感を詳しく見ようとする新しいものの見方が身につきます。
 さて始まりました。これから見つけることの楽しさ、描くことの楽しさにどっぷりとつかってください。一緒に頑張りましょう。
















2021年5月21日金曜日

1年次テキスト科目講評風景

 皆さんこんにちは。藤田です。関西地方はいきなり梅雨らしくなりました。

高校生の頃、美術室がプレハブ造りだったのですが、休日の美術室で一人きりでデッサンしているとき外では雨が降っていて、鉛筆の音と雨の音を聴きながらその静けさに幸せだなとぼんやり想ったことがあります。プレハブ小屋が雨粒に包まれる安心感でしょうか。部屋の中の水槽がそこだけ潤っている四角い水の固まりとして別世界であるように、雨の中の室内はいつもにまして外の世界と隔離されるような安堵感があります☂

本日は1年性のテキスト科目合評日でした。デッサン課題は提出数が多く皆さんのやる気を感じました。この調子で自画像、野菜果物にも進んでいってくださいね。


本日の様子を少しお届けします。







2年生、3年生の皆さんもテキスト科目頑張ってくださいね。


2021年5月14日金曜日

中原史雄先生個展開催!

 中原史雄先生の個展が開催されます。

 様々な美術館の展覧会が中止や延期になり昨年の繰り返しをしているような気になります。しかし感染予防対策や夜の会食などの自粛でかなりの罹患を防いでいます。ギャラリーでも十分な対策と注意を払っていますのでどうぞマスクの着用を忘れずに御来廊をお待ちしています。中原先生を囲んでの一杯などできないのは残念ですがご高覧いただけましたら元気をいただけること間違いなしです。



ギャラリー

なかむら


 中原史雄 展
2021年6月8日(火)〜  6月27日(日)月曜休廊

11: 00〜19:00


5月のYouTube前編

 皆さんこんにちは。先月から始まったYouTube動画ですが、今月は前編後編に分けて洋画コース主任、奥田先生の制作インタビューです。

抽象画というと、どう見ていいのかわからないという声を多く聞きますが、その答えが動画に収められています。

後編もお楽しみに💁


https://www.youtube.com/watch?v=RrJUXNtvRIM




2021年5月10日月曜日

洋画演習1−2履修前の皆さんへ

 こんにちは。藤田です。本日はテキスト科目、とりわけ洋画演習1−2を履修前の皆さんに向けたメッセージです。該当する方は目を通してくださいね👀

1年次テキスト科目の演習1−1(デッサン科目)は鉛筆使用での科目という事もあり、早めに提出する方が多いようです。ただ、演習1−2(自画像油彩、野菜果物油彩)は油彩を使用するためか、提出に滞りが生じているケースも多々見受けられます。主に油彩にまだ慣れていない方がはじめの一歩を踏み出しにくいのだと思いますが、演習1−2(自画像油彩、野菜果物油彩)を制作するうえでのポイントをお伝えします。


まず、自画像について。まず、良い自画像と聞いて思い浮かぶ作品はあるでしょうか。例えば、ゴッホ、エゴンシーレ、松本竣介、藤田嗣治、、、。多くの自画像が残されていますが、やはり記憶に残るものはその作家の内面を感じるような作品です。外面である姿形を描いているのに内面性を感じさせる。それは絵画の持つ面白さのひとつでもありますね。自画像から滲み出る内面性は人それぞれだと思いますが、ここではもう少し基礎的な意味でのポイントをお伝えします。


👾自画像

⑴目鼻口の細部でいきなり捉えない。面として顔を捉える

⑵塗り絵にならないように、静物を描くときと同様に陰影を意識する

⑶肌の表現。ジョーンブリアンのような肌色を使用するのは慣れないうちは避けましょう 肌は半透明に近い質を持つもので、複雑な色味を持っています。混色して色味の幅を増やしましょう


⑴は「顔」というとどうしてもパーツで捉えてしまいがちです。細部に入る前に筋肉や骨格を把握して頭部として顔を見るようにしましょう。

⑵は陰影を意識する事で顔の立体感が現れてきます。

⑶は肌を描く際の下地にはテールヴェルト(くすんだ緑色)がオーソドックスな色味です。キャンバスに擦り付けるように少量の絵具を薄く伸ばして下地にします。そのほか、バーミリオンで血色を出したり、仕上げに向かうに従い、ホワイトで肌の艶や少し透けたような感じを描きます。


🍋野菜果物

⑴手前と奥の関係性。モチーフの間の隙間を空間として捉える

⑵ひとつひとつのモチーフの質の描き分け(かぼちゃのゴツゴツ、トマトのつや、白菜の柔らかさなど)

⑶立体感。輪郭線が強いと立体感が損なわれる キワ(輪郭)は柔らかく、背景と馴染ませて、モチーフの中の出っ張りなどを強調して描くと立体感が際立つ

⑴はモチーフを描きつつ、その周囲の床面も意識して平面の上に野菜果物が載っていることを忘れないよう、周囲も丁寧に描きましょう。

⑵は静物画の醍醐味です。よく観察して質を描きます。

⑶は初心者はキワの表現がイラストのように強いことが多いです。西洋画は量感がベースにあるため、立体感が欠かせません。立体感に輪郭線は不要です。輪郭線よりも中の質や出っ張りを描いていきます。


これらのポイントを参考に、テキスト科目に取り組んでみてください。最近、やる気のメカニズムについてなるほどな、と思える文章を読んだのですが、よくやる気が出ないと言いますよね。けれど実際は“やる気”というものはそもそも存在しないものなのだそうです。待っていてもそんな気は起こらない。ではどうすればやる気が湧くのか。それは、行動を起こすとそれに従ってやる気が目覚めていくのだそうです。〈行動→やる気〉であって〈やる気→行動〉ではないんですね。

確かにやる気が出ない時にも渋々ながら何か始めるといつの間にか没頭していたり、その日だけではなく長期にわたって良いリズムが生まれることがあります。

それではテキスト科目が滞っているみなさんもとりあえず下地を塗ってみる、野菜を買いに行ってみる、というところからはじめてみたら良いと思います。

それでは😉





2021年5月7日金曜日

おくやまのりこ×オガワミチ ふたり展

卒業生のおくやまのりこさん、オガワミチさんのふたり展が開催されます。東京都中央区の並樹画廊にて6月2日(水)から6月7日(月)まで。



2016年洋画コース卒業生が中心となって作られたグループのHP↓

 https://style16.net/about/


是非ご高覧ください。

みえ県展 小柴博正さん出展

 卒業生の小柴博正さんがみえ文化芸術祭、みえ県展で入選され作品が出展されます。三重県文化会館ギャラリーにて5月22日から6月4日まで。是非ご高覧ください。




立野陽子展 月の子ら

卒業生の立野陽子さんが東京都中央区のSAN-AI GALLERY +contemporary artにて個展を開催されます。期間は5月16日(日)から5月22日(土)まで。是非ご高覧ください。






 

卒制Ⅰ (京都・東京)

 本日は卒制の様子をお届けします。昨年のコロナの影響で今年は京都も東京も卒制に取りかかる人たちが多くいます。まずその第一課題は立体物を作り、それを描くというもの。具体的なモチーフや抽象的な形態など様々な立体物が並びました。持ち運びやすさを重視する方もちらほら見受けられましたが、あまり現実的にならず“良いもの”を作ることに集中しましょう。夢見心地だからアーティストなのだと思います。

授業の一部をご紹介。京都編。













東京編














これから7月までに50号2点、その後の100号2点、ポートフォリオと副論とこの一年は制作づくしですね。よく語学を覚えたいなら海外でその言語に浸れと言いますが、美術も言語のようなものです。異なるのは言語を覚えるのではなく、言葉自体を自分自身で生み出していくということです。

1年頑張っていきましょう!