せっかくの川村先生のいままでを振り返る大きな展覧会ですので、遠方の見られない方のためにも報告しておきます。
6月21日梅雨の晴れ間をぬって、西宮大谷記念美術館で行われている川村悦子先生の個展と、大阪ギャラリー白でおこなわれている、昨年度まで抽象を担当していただいていた、中島一平先生の個展をみてきました。
京都は朝のみ雨が残っており少しムシッとする感じでしたが、西宮の阪急夙川駅を降りた頃はまるで真夏のような暑さで、大阪はそれにも増してけだるい夏の様相でした。
駅は阪急電車の夙川駅で下車、大阪からですと阪神電車の香櫨園が近いのですが、私は京都から便利な阪急夙川の流れを横にぶらぶら歩き、15分もすると到着しました。
このあたりは裕福なのでしょうね、のどかで落ち着いた雰囲気でした。
禁煙条例なのか、街路に吸い殻一つおちていないというか…
ベネチアビエンナーレで有名になられる前の藤本由紀夫先生の展覧会以来、
本当に数十年ぶりの同館訪問でした。
今回は特別に写真可ということです。
最初の部屋は近作のドローイングなどの制作過程を含めた「公園」を主題にした作品群。
宝塚からこられた学生さんが熱心に見ておられました。
一室目の終わりあたりから、蓮の連作が続きます。
二階の第二室ガラスケースには蓮や葉牡丹の連作、襖や屏風、掛け軸といいった和の設え
細身の掛け軸郡
屏風や襖には箔なども試みられており、川村先生のあくなき創作実験が感じられます。
この作品などは、洋と和の間で揺らめく不思議な感性が感じられました。
これ私は好きですね~とても強い!
ご覧ください、この大胆な銀箔の扱い方!私にはできません。
第三室はイタリア滞在後の作品群。
ベッリー二やジォットの引用や、自作との比較画面が面白いです。
大胆な筆遣いとの自作比較など、こんな遊びごころも…
奥の樹の描き方は省略ではなく、川村流独特の消し方です。
三室の向かい側には懐かしい初期の作品群が並びます。
こちらは、イタリアではなくスペインでしたっけ?
曇りガラスの窓越しにのぞく風景といった風情の絵画連作です。
第四室は至ってシンプルに小品の椿と小道の作品。
これらは近年の川村先生の心境を物語る作品なのでしょうね。
以上がほぼ全容です。少しは味わっていただけたでしょうか?
階下のロビーからは瀟洒な庭園が望めます。
入口外には回遊式で庭園を鑑賞できる小道がのびています。
さて、私たちも幾度となく見せてもらってきた作家川村悦子さんの作品ですが、
こうして回顧展形式で拝見するのは初めてのことでした。
よく見知った作品群を順に見せてもらうと、その時々の興味に応じ
その試行錯誤を正直に表現に活かす絵画への前向きさを感じます。
西洋的具象と和の平面性の間…
映像だけでは現代的写真表現のように思えますが、
間近でみると、画面の端々まで描きながら削り出していく
川村先生独特の細かなマチエールに対するこだわりが垣間見えます。
これからご覧になる皆さんはどのように感じられるでしょうか。
7月31日まで
(水曜休館ですので気を付けて/7月18日のみ無料)
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《中島一平展報告》 6.13-25 大阪ギャラリー白
さて、こちらは馴染みのうすい方もおらるでしょうが、昨年度まで抽象の講座を担当していただていた中島一平先生の個展です。念のため、東京の総合科目の中島先生ではありません。
大谷記念美術館を出て、今度はすぐ近くの阪神電車香櫨園駅から一路大阪梅田まで…
その後は、お初天神商店街をひたすら南に下り老松町にあるギャラリー街へ、西宮に増して暑い
ことこの上なしでした。
中島一平先生は若かりし頃より「絵画の解体と構築」といった問題に向き合う理論派で、大きな賞をとられた後も、黙々と抽象絵画と向き合い、自身のあり方を模索している方です。
私は見ていないのですが、昨年一昨年とウォールペイントと称する巨大画面を神戸で公開制作されています。これがカッコいいのですが、今回はギャラリー展示を紹介します。
絵具の色数を制限し混色をする、中島一平先生のクレー式・コンポジション
最少の色で刷毛のストローク数も制限したドローイング
色とストローク回数の制限の中でのペインティング
最近とみに斜めのストロークや菱形がモチーフとして出てくるようす。
なんかウォールペイント以来はじけてますね~
リヒターやセザンヌも飛び越えているようです。
極限まで工芸的な要素は省かれ、筆跡そのものも楽しまれている様子。
ベニスのグッゲンハイム美術館で見たロベール・ドローネーを思い出させます。
かいつまんで勝手な感想などを書き連ねましたが、中島先生!ご覧になったらごめんなさい。
しかし、いつまでも若々しい感性で挑む中島先生の姿勢にいつも勇気をいただきます。
暑い中を歩いた甲斐があり、なにかしら涼風にあたったようで絵はいいな~と思った次第です。
6月25日(土)まで(大阪のギャラリーは日曜はお休みですのでご注意のほどを!)
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以上
私にとり、全く違った展開をされるお二人の先輩作家のレビューでした。
ものの好き嫌いは、鑑賞者の経験量や感性によっても違いますし、勿論のこと作者も様々な影響下で揺れながら変化しつづけます。
簡単に両者の嗜好性といってしまえばそれまでですが、きっといつまでも朽ち果てぬ原体験のようなものがその底流に流れているのではないでしょうか。
みなさん一人一人にも必ずその原体験があり、それがそれぞれの絵画を描く・鑑賞する支柱になっているのだと思います。
自分もそうありたいし、絵画を目指す皆さんには、このお二人のように自信を持ちそれぞれの絵画を見つけていってほしいものだと思いました。(Y)