「光と影に色を観る」
秋晴れの空気が気持ちいい京都の瓜生山キャンパスにて、洋画コースの1日体験授業が行われました。授業のタイトルは「光と影に色を観る」です。いったい何をやるのでしょう?かんたんに言うと、近代洋画の巨匠モネの絵を水彩の三原色を使って描いていきます。模写?なぜ洋画コースで水彩?と思われるかもしれません。その疑問に対する答えは、そもそも洋画を学ぶとはどういうことなのか?に対する答えと同じものになるのではないかと思います。とりあえず授業の様子を見ていきましょう。
(写真1 モネの資料)
まずは自分が描きたいモネの絵を選びます。
(写真2 三原色絵具)
使う絵具はシアン(青)、マゼンタ(赤)、イエロー(黄色)白の4色のみです。
(写真3 配布資料)
配布資料で課題の意図と進め方の説明を受けます。入学後の授業においても、何をやるのか?となぜやるのか?をしっかり理解しておくと授業から得られるものが明確になり意欲もわいてきます。今回意識しておきたいことは、
1、 明暗の変化や固有色の中に色味を発見する
2、 混色だけでなく重色で色調の幅を広げる
3、 筆致を活かして対象を捉える
の三つになります。
重色
重色とは、下の色が乾いてから上から絵具を重ねることです。混色とはまたちがって、層として色の深みが感じられるようになります。油絵具が得意とする色の見え方ですが、今回は制作時間が短いので乾燥の早い水彩を選びました。それでは絵具を出して実際に描いてみましょう。
制作途中作品
最初は混色せずに、三原色をそのまま重ねていきます。これだけでもとても豊かな色調の画面が作られています。
制作風景
今回は少し描き方を指定しました。モネの筆致を観察しながら、点描のような筆致で絵具を重ねていきます。絵具が画面上で混ざらず、色を濁らせず重ねていくことが出来ます
ある程度三原色が重なったら、混色によって作った色も重ねていきます。モネの絵の色に似せてもいいし、自分の作品の中で色の響きあいを意識してアレンジしてもかまいません。模写が目的ではなく、モネの絵をモチーフとして色味を発見し、色調の響きあいを感じながら制作していくことが今回の授業の目的です。色の幅が広がり、驚くほどいい作品が出来ています。
全員の作品
最後は全員の作品を壁に貼って簡単に合評を行いました。壁に全員の作品がならぶと「色がきれい!」という声が聞こえてきました。それもそのはず、壁を一つのキャンバスとして、みなさんの作品が並ぶことでさまざまな色調が響き合っているからです。「自分の作品が上手く描けたかは分からないけど、楽しかった。」「いろんな人の個性的な作品が見られて良かった。」などの感想が聞けました。
さて、冒頭にあった洋画を学ぶとはどういうことなのか?という問いに何と答えましょう。油絵の技術を習得する、私の作品を制作するのはもちろんのこと、時にはルネサンスの巨匠になりきって遠近法や明暗の観察の仕方などを学び(1年次)、時にはモネやセザンヌから絵画の造形性を学び(2年次)、時には抽象表現やイメージ表現で自身の可能性を探り(3年次)、そしていよいよ卒業後も続けていける自身の制作を追求する(4年次)。洋画を学ぶとは、500年分くらいの巨匠たちの肩に乗りながら、そこに微小ながらもかけがえのない自身の身長を足して、世界をできるだけ遠くまで見ようとする、そんなことではないかと思います。(Y)