17日に京都本学で行われる筈の「ホームカミングデー」でしたが、台風直撃も予想され、皆さんの交通事情を考えて中止となってしまいました。来られる予定でおられた皆様申し訳ありませんでした。
私達も前日まで何の連絡もなく、すべて大学HPで告知されていたようで、観ておられない方にはご迷惑もかかったことと思います。併せてお詫び申し上げます。
これほど様々なテクノロジーが発達しても、まだまだ人知では解決できないことだらけですね。地面が動き、大風が吹くだけで右往左往するのに、おまけにもめごとやミサイルも飛び、問題は資源や土地といった昔からの利害ばかり、人が増えるだけでさらに複雑にしているのかも知れません。
そこで豊かさとは何かを問う、我々の芸術にこそ意味があるのかも知れないですね。
山本先生から演習Ⅲ-1塑造と油彩の東京スクーリング報告が届きましたのでアップさせていただきます。
《洋画Ⅲ-1 「人体油彩2-塑造と油彩」》
前半:8月25日(金)~27日(日)
後半:9月8日(金)~10日(日)
担当:山本 努 先生
東京外苑キャンパスにて8/25-27、9/8-10の6日間の日程で前期19名、後期18名で行いました。前期3日間では人体をクロッキー、塑造(水粘土での立体制作)、木炭デッサン(F30号)を行います。やること多すぎで、かなりハードです。
但し、流れはわかり易く油彩を描くにあたって人体の掴み方をクロッキーでは、流れや
動きを、塑造では量感や組み立てを引き継いで木炭デッサンで人体の形態確認と背景を含めた後半に制作する油彩エスキースを行います。
逆にいえば、とても丁寧に人体と取り巻く空間に迫る事が出来る授業ともいえます。
クロッキーは写真を取り忘れました。
塑造はこんなのを作ります。なんなのか意味がわかりませんね。
これを基礎にして粘土をつけていきます。
人らしくなってきました。
塑造は個人的に大好きです。得意だからでは無くて、大人になって粘土をこねくり回す。童心に戻れる感覚が新鮮な発見をもたらしてくれるようで出来の善し悪しではなく過程のやり取りが面白い。
駆け足で木炭素描です。
レイアウトを決める為にクロッキーを挟みますが、塑造での経験が活きたのか昨日より格段に良くなっていると感じました。
油彩のエスキースの意味合いがあるので、背景を描きます。人体のみ切り取り描くよりもそのまま描けばいいので簡単に思えますが、なかなか難しい。人体との対比、構図を踏まえてトリミング位置を決めながら描いていきます。
このときに、画面上に入ってくる形態を色面化して明暗のバランスを整えておくと油彩が楽になります。
また、人体の形態確認もやり取りしやすい木炭でチェックします。
良く描けたと思います。
無理に絵作りせず、無難に描いているよう自然に見せる難しさが背景にはあります。実際の世界は必ずしも主題に奉仕しません。が、画面には主題が存在します。どのように自然さを絵作りするのか、面白みの一つと思います。
後半油彩に入ります。
焦らず、素描の確認から行います。人体という有機的な対象やアトリエの空間の要素なども時間の経過に伴い多少変化します。また、前半制作中に感じた事など思い出す為にもう一度、自身の制作した画面と向き合う時間を設けます。
基本的に明暗に従った色彩での制作となります。でも何か目標をもって挑戦するのであれば止めません。課題という制限の中でなぜ出来ないのか、問いかける事から自己表現の切っ掛けが見つかる事もあると思います。
すごく、丁寧にモデルさんを見て、細部を追いかけ、夢中になって描き込んでいるのにうまくいかない。画面を離れて、突き放してみましょう。鏡に映したり、逆さにして客観的に見てみる事も良いと思います。明暗の階調が無くなっているかもしれませんし、カタチがおかしくなっているかもしれません。
背景がわからない。見えるものを描いてみると良いと思います。それでは絵にならないかもしれませんが、何故構図を壊すのか、その要素はなにか。要素を無くして人体にフォーカスする、それもありです。しかし、裸の人を複数人で取り囲む異常事態を逃す手も無い気がしたりします。絵画では、場を長時間共有したからこそ出来る映像や写真では難しい、記憶、空気感などを含めた経過を詰め込む事が自身の目や感覚通じて描き込むことが出来るかもしれません。
良い制作、絵が出来たと思います。よく見て、感じ、出来るだけ忠実に描く課題のなかで、皆さんずいぶん違う表現になりました。描き方、技術も大切ですが、対象を見続け、積み重ねられた画面との関係を築くことから必要な事を教えてくれる事もあります。そこから次のアプローチを始めて良いように思います。また、日々忙しいとは思いますが見続ける事、手を動かし続ける事で自らの身体に経験を積み重ねる事を継続して頂ければと思います。(報告:山本先生)
※山本先生、受講生の皆さんお疲れさまでした。忙しい時間を過ごされましたが、クロッキー、塑造、木炭デッサンともに、同じくモデルを「ムーブマン(動勢)」、「立体空間」、「平面表現」といった多方面から探る作業です。
ですので「クロッキー終ったし第一行程終了で一旦終わり!」とはならないのです。
一連の作業としてモデルの人体を把握することが大切ですね。
それがしっかりできたせいか、後半の人体には単に写すという意味だけではなく、山本先生の評価にある通り、良い作品ができているように思います。
デッサンや表現は日々の技術を磨くことも大切ですが、なによりも対象から様々な実感を受け取ることがとても大切です。
この感触を忘れず、絵の楽しさを味わっていただければ次第に表現力が向上していくと思います。熱が冷めぬうちにテキスト課題も頑張ってくださいね!(Y)