皆様お元気でお過ごしのことと思います。
全国的にあたたかなお正月でしたね。
元旦から初詣の人々で賑々しい人出だとか。
しかし、昨日は北朝鮮が水爆実験を施したとかで、
日本ののんびりムードに緊張が走りました。
テレビや新聞でよく見る、あの金書記のお顔の奥には一体何があるのでしょうか。
2016年の平和を祈りつつ、今日は新年に相応しい?京都のお話から。
この極端に折れ曲がった梅の図は狩野山楽、山雪共同制作による「梅花遊禽図襖絵」です。
2013年の京都国立博物館で開催された「狩野山楽山雪」展でご覧になった方もおられるでしょう。
このうねるような梅の幹に制作者の特異な造形力を感じませんか?
これは妙心寺塔頭天球院にある襖絵で、
京狩野の絵師・狩野山楽・山雪の代表作として名高いもの。
「金地に映える鮮やかで濃密な色彩と垂直の線や曲線を活かした画面構成が見事な金碧障壁画で、創建当時の絢爛豪華さを今に伝えている」と、お寺の解説にあります。
この造形美が後の山雪作、老梅図襖(旧・天祥院客殿襖絵)に繋がります。
この下の絵も一種異様な梅図ですね。
妙心寺天祥院客殿襖として明治初年まで飾られていたそうですが、
現在はアメリカのメトロポリタン美術館のコレクションとなっています。
狩野山雪作「老梅図襖」 |
あのしなやかで清々しい香りのする梅の木が、老梅とはいえ、この怖さ!
日本人の造形力ってすごくないですか?
さて山楽、山雪の共同制作の襖絵が残された天球院は普段非公開のお寺ですが、
「京の冬の旅」の一環で、非公開文化財特別公開が1月9日から始まります。
天球院方丈から |
天球院では現在山楽、山雪が手がけた152面を保存のため、高精細の複製を製作中で、
実物は博物館への委託が進んでいます。
複製といっても最先端デジタルカメラで撮影されたものにオリジナル同様金箔張りがなされ、手に触らないかぎり(触ってはいけませんが)、本物との見分けがつきません。
私は2013年に初めて天球院に行き、創建当時からここにある山楽山雪の襖絵を
「現場」で目にして、自然光でみるこれら襖絵の美しさや金箔効果に心打たれました。
「現場」で目にして、自然光でみるこれら襖絵の美しさや金箔効果に心打たれました。
後で、お寺の方から複製「竹に虎図」「朝顔図」とオリジナル「梅に遊禽図」が一緒に置かれていると聞いて仰天したくらいです。今回はこの「梅に遊禽図」の実物が天球院で見られる最後になるとのこと。
でも正直に言えばこうしてお寺に拝観に上がっても、
実物ではなく複写を見ることになるなんて、ちょっと残念ですね。
京都のお寺はこうして、作品保護のためにオリジナルは博物館、そしてお寺には複製が鎮座している不思議な風景になっていきます。
オリジナルをオリジナルの元の場で見ること。
大切なことですが、日本ではこれが難しくなってきました。(K.)