このブログを検索

2014年1月8日水曜日

謹賀新年。「工藤哲巳回顧展」と「山口薫展」のご案内

2014年 皆さま 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

関西では今日までお天気が続きましたが、気温は低く寒い毎日でした。
皆さまお正月をいかがお過ごしでしたか?
早いもので4年生は2月のスクーリングを最後に卒展の準備に入ります。いよいよ忙しいシーズンの到来ですね。あせらず今まで行ってきたことを信じて頑張りましょう。
3年生他各学年は夫々進級が待っています。新たな学年にはまた新しい先生方や学生さんたちとの出会いが待っていますね。お互いの交流が楽しみです。


この112日(日)と19日(日)の両日、京都本学と東京外苑キャンパスにて一日体験授業が行われます。本学洋画コースにご興味のある方はぜひ体験授業に挑戦されてください。
12日は京都で、「りんごが絵になるーPART2」、油彩に挑戦していただきます。
19日は東京で「りんごが絵になるーPART1」鉛筆デッサンに挑戦です。
楽しく行いたいですね。詳しくは入学課情報を!

工藤哲巳ー「種馬の自由」1973年


さて今月に終了する展覧会のお知らせです。
ひとつは現在大阪の国立国際美術館での工藤哲巳展です。

「あなたの肖像—工藤哲巳回顧展」119日(日)まで。

199055歳の若さで亡くなった工藤哲巳の国内では20年ぶりの大回顧展。
国内外の代表作200点が勢揃いしています。大阪で生まれた工藤の国立国際美術館での展覧会は本当に場を得たというのにぴたりの内容の濃いものです。

「あなたの肖像」は工藤哲巳が最も好んで使用した題名のひとつ。
今回もこの題名の作品が何点も出展されています。一見グロテスクで多彩な色彩に満ちた立体作品群は不気味で挑発的でもあるのだけれど、「あなた」とは、私たち鑑賞者のことであり、また作品に対峙する工藤自身でもあり、いずれも他人ごとではない身につまされるような哀感や不安を誘う奇妙な心地を感じさせます。やっぱり大阪出身だから?キャラクターは強烈。
でも可笑しくて悲しい。戦後の前衛美術を代表するこの展覧会をお見逃しなく。

大阪会場は119日までですが1/13()は開館、1/14は休館)、その後、東京国立近代美術館24日〜330日まで。同412日〜6月8日には青森県立美術館に巡回します。大学生は¥45018歳未満無料 goodやね!



もうひとつは山口薫展です。
京都の八坂神社前、何必館•京都現代美術館にて126日(日)まで(1/13は開館)
山口薫は東京美術学校西洋画科を卒業後にフランスに留学し、帰国後はモダンアートの協会の創立に加わりました。また芸大で教鞭をとって日本洋画の発展に貢献した画家ですが、その華やかな経歴とは打って変わってとても寡黙な絵画なのですね。
工藤哲巳もパリに渡りヨーロッパの美術の動向を学んできました。工藤の鳥かごシリーズの作に見られるように詩情性を感じさせるという意味では両者は共通点もありますが、山口薫は徹底して静か。
戦前から戦後にかけて美術表現が目覚ましく変貌を遂げた時代に山口薫の作品もまた独自の画業展開しますが、いつもどこか自然体。あたかも飾らない、描かない、主張しないというスタンスを好んで選んでいるかのように見えます。今回の展示では山口の油彩をはじめ、水彩、詩など70点が展示されていて、DMの写真の作品は彼の絶筆となった、「おぼろ月に輪舞する子供達」の絵も展示されています。


山口薫が没したのは60歳でした。山口も工藤も早いですね。上の絵に見える、お月さまと子供の輪がほぼ同じ大きさ。生と死を象徴しているかのような構図ですね。最後に山口薫の詩を紹介しましょう。


残しておきたいものがある。
自分の手垢である。
自分のために

描くことがデッサンか
消すことがデッサンか
両方とも消すことが多かった
それはみな涙であったかもしれない

美は形式ではない

どこかもっと奥まったところに
それは何だろう
感性なのか

芸術家の生命は それが成長すればするほど
どうしようもなく
ニヒルになっていくだろう
ニヒルというレッテルをはった
商品ではなく
わずかな空間に生き
わずかな食事に生き
貧しい思想に生きる暮らし

(遺言)
どんな病気でも酒は呑ましてもらいたい
自分は自然死がよい


山口薫はお酒が大好きだったそうです。崇高な詩文を沢山残されていますが、この遺言が詩に添えられているとと、人間山口薫を伝えるのに何か温かいものが流れてきます。
ぜひお出かけください。山口薫の美の流儀がそこにはあります。(K.)