またまた二年次配当スクーリングの報告です。
洋画の二年次といえば写実描写を通し、画面造形とはどんなものかを学んでいきます。今回担当された由井武人先生から報告をいただきましたので順を追ってみていきましょう。
【洋画Ⅳ-1】静物油彩2-
コラージュからの絵画制作
前半:8月28日・29日
後半:9月4日、5日
担当:由井武人先生
テキスト科目でもスクーリング科目でも、二年次の課題の大きな目的は「観察」や「描写」にとどまらず「構成」という造形要素を学ぶことにあります。1年次が遠近法や明暗法などのルネサンスの時代だったとすれば、いよいよセザンヌやピカソやマチスのいる近代の造形という領域に足をふみ入れたとも言えます。美術史上もっとも劇的に絵画が動いたこの時代に学ぶことは多く、3年次以降の制作につなげていくためにもとても重要な段階にあたります。
◆前半
まずは事前課題で持ってきた印刷物などのコラージュ素材を机の上に出してみます。この時点で、他の人のものも見てみると面白い発見がありました。
Iさんの素材:こちらは白っぽいペールトーンがほとんどです。
Sさんの素材:こちらは少し黒っぽいダークトーンで揃っています。
無意識かもしれませんが、素材を選ぶところから制作が始まっていて、その時点でそれぞれの個性や感性が反映されていることが分かります。個性や感性は、意識していないときほど自然に出てくるものかもしれませんね。
Q:1年次の課題には必ずあって、2年次のこの課題にないものは何でしょう?
写真だけだとイメージがわきにくかったので、下地に絵具で色を重ねたり線をひいたりしてみました。色や線、形がきっかけとなって写真のコラージュが進めやすくなりましたね。
「猫の冒険」というタイトルをつけることでイメージをつくるきっかけにしました。じっさいに飼っている猫なので思い入れもあります。
二色刷り、ネガポジ反転:
コピー機の機能を使って二色刷りや、ネガポジ反転を試されました。色が変わるだけで不思議なイメージになりますね!
コラージュ完成、合評:
2日目、コラージュの完成です。色や形のリズムなども考えながらしっかりと構成されています。
答えは、A: 重力です。天地と言ってもいいかもしれません。
このコラージュ課題のコツは、机の周りをぐるぐると回ったり天地をひっくり返したりしながら、対象が何なのかをいったん忘れて画面の構成やバランスを確認することです。
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◆後半
なぜなら、前半のうちに色や形、構図など絵画としての造形がほぼ完成しているからです。あとはそれを油絵具でどのように表現するかという試みです。基本的には筆で描写していくのですが、質感や素材によっては道具や技法をいろいろと工夫してみるのもいいと思います。
ステンシル:マンガなどのスクリーントーンを表現するために、スポンジやラップで工夫してみました。形の際をシャープにするために、画用紙で型をつくってポンポンと絵具をのせていきます。筆で輪郭を描くのとはまたちがう印象になりますね。
Iさん描写アップ:全体にベースの色をのせたあと、緻密に筆で描き込んでいき密度を上げます。この時も、画面全体を見ながら粗密対比のバランスなどを確認します。
完成作品:
コラージュという技法が大事なわけではなく、ピカソやマチスやカンディンスキーなど近代の巨匠たちが実践した「絵画とはどういう造形要素で成立し得るのか」ということを二年次で体験しておくことはその後の自由制作を大きく左右すると思います。
課題どうしのつながりを意識して、ぜひ今後の制作に活かしていってください!(報告:由井先生)
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静物油彩なのに、写真のコラージュをエスキースに絵を描く?不思議に思う方もおられるでしょうが、写真があふれる現代では通常の手法のひとつになっています。勿論静物を前に画面上で自由に構成する考え方から来ていますが…
中には静物なのに「猫」まで登場していましたね。どうしても描きたかったのでしょうね。静物からはずれますが他のスクーリングでもままあることです。他にも狸の置物やシーサーがあったので「猫」を置物として考えたという課題解釈かもしれせん。
ともかく頑張ってやっておられたので多少の勘違いは問題ありませんが、仕上がりの画面から主題の猫を除いたらどんな形や色が欲しかったかを考えてみるのも勉強になり面白かったのではと思います。
(もちろん静物画という意図があるので勝手に解釈し動物でも風景でも良いという訳ではありませんので、今後受講される方は静物による構成ということを意識して下さい。)
(Y)