やっと過ごしやすい季節となりました。
大学院、M2はいよいよ修了制作の仕上げに入るところ!
スクーリングが対面というのは当たり前かもしれませんが、それができない状況が続き、新しい日常の意味を考えさせられ、いやが上にも答えを出す必要に迫られています。この大学に限らず社会そのものが地殻変動を起こしそうです。我々は今、絵を描くことがどんな事か、一度素直になって考えてみませんか。一人になって描いていると、絵を描くことが自身の救いなのか、他者との共有なのか、面壁九年の修行なのか、頭の中で渦巻きます。
この時期に来てやっと多くのスクーリングでは対面が始まりました。そして、対面スクーリングには妙な緊張感があります。その緊張感が受講者自身の一筆一筆に反映されるのではないかと教員側もついつい言葉を選びます。そう言った生の出会いは、人の仕草や視線のやり場だけでも心を読んだり読まれたりがあり、緊張感が生まれるのかも知れません。しかしこの緊張感は程良いと思います。気心の知れた人たちの中で、切磋琢磨が生まれる緊張感です。ただそれもそんなに長くは続きません。ここM2ではあとスクーリング2回で研究科目が修了となります。ここまでくるとあとは、制作研究ノートの仕上げと、作品の仕上げ。何事も終わりよければ、、、とより良いフィニッシュを目指してください。
授業はこれまで自宅で制作された修了制作の講評からスタートし、今回は、洋画研究室の新任スタッフとともにスクーリングを、講評を展開しました。その新しいスタッフを紹介します。既に学部の授業では卒業制作はじめいくつかの授業を担当されています。
左端の女性が、
藤田つぐみ先生です。
M2
では、作品を見ながら今回の大学院M2のスクーリングを振り返ります。
随分とすっきりと全体感をまとめられています。こういった民家、池の縁にある日本庭園、単なる和風建築ではない風情を表現するときに、もう一度季節や時間を絵の中に表現することに立ち戻っていただいてはどうかと思います。空の色と池の色は関係しています。この場所はそういった空気と同時に作者も飲み込んでいます。さて連作の後半に入って、どのように4点が並ぶのでしょうか。ここからが勝負!楽しみです。
秋真っ盛りまで後ひと月でしょうか、いやふた月でしょうか。しかし画面には桜が満開です。随分と抽象的な画面構成に進展きました。季節感も重要ですが、ひょっとしてそういった一般的な解釈は通り越してもいいのかも知れません。造形としてみせるモダニズムはいつになっても制作の基本かも知れません。そこをスタートに様々な展開が広がっていくのです。
幻想的な公園の図が出来つつあります。とおりゃんせ、というのは実は結構恐ろしい話が隠されていて、日頃からよく通り抜ける公園に、そんな不気味な影の存在があるとはつゆ知らず。非日常の世界を絵画はいとも簡単に見せてくれます。優しい色と単純な形がふとそんな道の空間へと我々を誘います。
おとぎ話を娘に聞かせる図、ですね。絵画の平面性を強調しながら、微妙な奥行きや、色彩の破綻や調和を楽しむ作品です。もちろんここからが勝負というか、おそらく未だ見ぬ自由空間がこれから展開して来るのでしょう。動物園のようなおとぎ話のような、、、しかし、何処かに毒が隠されている、暗黒の世界が待ち受けている。それが絵画かも知れません。
人柄を示す、というのも絵画の特徴かも知れません。なんと穏やかで、優しい色調でしょうか。モチーフもモチーフから匂い立つ空気も、静かで太陽の微笑みを感じます。しかし、作者は本当にそういったことを表現しようとしているのでしょうか。具象表現をする人は時に鋭くナイフで切り取るような緊張感を求めます。果たして、、、
圧倒的な抽象表現はこの方の絵画が示してくれます。全く対象がなく、キャンバスとその上に置かれた絵具の層が指し示すものだけが、辛うじて我々の視覚へ介入する刺激となります。
それは指の跡であり、偶然の織りなす色彩の対比であり、作者にもその行方がわからない絵具の乱舞です。にも関わらず表面は整然と緑と青の美しいコントラストで出来上がっていく。どこまで行けば仕上がるのでしょうか。
大きな作品を3つ並べるとさずがに説得力が出てきます。人がテーマであることはこの賑やかな時間の切り取りを見るだけで誰もが納得いきます。面白くしてやろうとか、うまく描いてやろうといった、あざとさをほとんど感じることはありません。素直な作者の心情が隠すところなく溢れています。絵にしようとしない、型にはめようとしない、ぬりえを描こうとはしない。たまにはひっくり返して全体を見てもいいかも知れません。終点が楽しみです。
M2は修了制作とともに、「制作研究ノート」いわゆる修士論文、このように書くと難しく聞こえますが、自作の成り立ちや創作だけでない造形上の試みや、それこそ興味の持ちどころを文章化する論文を作っていただきます。
担当教員がその草稿を読みながら、チェックを行います。
論文指導は、こんな感じです。
文字数もそんなに多くはありませんが、体裁は大事。
みなさん間違えないように、次の草稿③の提出では、仕上げるつもりで内容を深めてください。次のスクーリング10月31日、11月1日には、制作研究ノート中間発表、そのレジュメの提出があります。忘れないように中間発表の準備をお願いします。
スクーリングでの制作風景です。
M2の次回は制作研究ノートの中間発表です。
レジュメや写真を準備して、この2年間のまとめに入りましょう!
M1は自主制作③の講評と④の開始。次回のスクーリングは展覧会もあります。
ドローイングをやりながら、自身を振り返り、グループ展を目指して描き切る作品と向かい、発表の準備をしてきました。ここからのM1の目標は、修了制作に向けてのまとめになっていきます。制作の数も少しずつ増え、技術的にもモチーフの選択にもそれぞれの個性や、好みが出てきています。
花シリーズ、椿、桜、紫陽花、そして向日葵。4作目に突入しました。計画通りで進んでいます。絵を描く人でこんなに計画通りに事を進める人を、私は知らない。と言うとちょっと大袈裟かも知れませんが、着々と計画を進めてらっしゃいます。このコツコツは必ず蓄積されます。ただ、図柄が変わる事で目先が変わって、ついつい表現の工夫を忘れがちになります。目
標を小さくすることも時には大切です。型ができそうになれば型を外すことも工夫の一つです。
表現の特徴、心地よさの焦点は随分絞れています。この世界を描くことが喜びになっているのがよくわかります。このままどんどん歩みを進めてほしいと思います。その時に、絵具のこ
と、キャンバスのこと、描きたい対象の取材、それに絵の構想。そう言ったことを計画して進める、準備をすることを大事にしてください。この絵の次の作品やその次の作品のことも、大きな視野で見渡してみてください。ますます楽しみになります。
夏の風景でしょうか。こうやってパソコンやモニターを通すと色が綺麗になりすぎて、実物とは違った印象になります。この作品はその傾向が顕著です。本物は決してそうではありませんが、綺麗ですが軽すぎます。この作品の色彩は綺麗と言うよりも、清々しい、が正しい表現だと思います。例えば、この絵の奥行きとは何か、広がりとは何か、そんなことを考えると、目の前にある色彩ではないこの絵に合う色彩を選ぶことができるかも知れません。
いつも100号やそれ以上のサイズや、変形で様々な仕事をされています。そのバイタリティーは素晴らしいと思います。そしてとても大事なことです。絵を描くのも早い。これも素晴らしい。岸田劉生は静物を描く時に「早く描かないと、静物が逃げそうだ」と言ったそうです。山は流石に逃げないでしょう。しかし描きたい気持ちは逃げてしまうかも知れません。気持ちを逃さないように、攻め方を考え単調にならないように、と思うだけでどんどん進めそうです。
お話の中では、油彩という素材の研究という態度を常にお持ちです。しかし、そのことよりも表現の研究をされているように見えます。絵具のつきや形の表現、特にグラデーションの作り方については様々に工夫を凝らしていらっしゃる。それが次の作品、「泡」に行かされそうに思います。大きな作品はできるだけ距離を保って見るようにしてほしいです。時には双眼鏡を逆にして。スマホで撮って、小さくすることモノクロにすることでも学習できます。
絵に自由があります。形にとらわれない色にもとらわれない自由。ただ自由には秩序を与えないと人には伝わらなくなります。観念的な図を与えてしまうと、見る側の自由な読み方を遮ることにもなります。この辺りは難しいところです。たまたまでいいのです。何枚も描くことで
良さが磨かれます。エスキースから描くのではなく、常に本番、常に制作が性格に合う描き方かも知れません。のびのびと屈託無く!
M1はできるだけ様々な可能性に挑戦して欲しい時期です。
将来に向かって広く絵画を捉えて、自身の表現を探して欲しい時期です。
M1生は時間のスクーリングでは、学外での展覧会があります。
役割分担して、準備ご苦労様でした。いよいよ次は発表が待っています。10月29日(木)から11月1日(日)まで。これをご覧の方は是非、感染予防策をしていただいて、お越しください。ちなみに既にブログに載っていますが、ギャラリー a (寺町二条下る東側)です。
M1 M2 は佳境です!
みんな元気で頑張りましょう!!