【スクーリング・展覧会報告】
五月最初のブログアップ、画像はありませんが最近見た展覧会と卒制スクーリングの報告です。
《卒制スクーリング》
A日程4月28日~30日とB日程5月1日~3日に亘って、今年の卒業制作ニクラスの最初のスクーリングが行われました。今年からA日程は中原先生と相見先生、B日程は今年通学から通信へ主任としてこられた川村悦子先生と私というゼミ担当になりましたが、特に問題もなく無事に終了しました。着手中のみなさんお疲れさまでした。この最初のスクーリングでは、各自のテーマから考えた立体作品を持参し、それをモチーフにして10号のキャンバスに絵画化していきいます。
50号の自由課題のエスキースも持ってきてもらうので、みなさん直接卒制に入ると思うのか、立体とは関係ない10号をイメージして来られますが、実はこれ、3年次で行ってきたモチーフやテーマを立体を通じどのように画面にアプローチしていくかをもう一度見直す課題で、戸惑いもあったようです。
しかし、立体構成とはやや違う趣の、それぞれの思い込みで作れらた立体は中々面白く、却って整った造形性からは生み出せぬ興味深い画面が登場しました。とりあえずこの部分は悩みながらも新しい発見があったのではないでしょうか。
さて問題はここから。というのはこれから着手者は夏までの間相当の準備が必要になります。
①このスクーリングで教員からOKの出たエスキースをもとに50号を二枚描き7月に提出します。
②同時にポートフォリオに使う作品写真を撮りためていきます。これは一二年次の課題は一切入れず、三年次からの課題と自由課題の作品で20点の油彩と10点のドローイングが必要になるので作品数が足らない方はこれからバリバリ描かぬと間に合いませんね。
③50号を描きながら、制作ノートや造形的発見を副論の下書きとしてメモしていきます。
④夏のスクーリングまでに100号のエスキースを二三点作らねばなりません。
他にも100号をどうして搬送するのかとか、濡れたキャンバスをどうして持ち帰るのかなどの説明で、初回からてんこ盛りのスクーリングでした。
以上が夏までのスケジュールになります。大変でしょう!でもこれをやっておかないと卒業はできないのです。また、三年次までののんびりペースでは実力が付かないとも言えます。
皆さんこのほかに、残りの卒業単位数取得や試験、教育実習などがある方も……。
でもまあ、これまでに健康の問題や仕事の問題でリタイアした方以外は全員卒業制作は無事に終えておられるので一気呵成に駆け抜ける時期だとでも言えるでしょう。
全て、後半半年を100号の卒制本体に没頭するための試練です。
これから卒制へ臨む方は、シラバスをしっかり読んでイメージをしておいてくださいね。
ともかくこのように今年度の卒制がスタートしました。6月には中間講評があります。全員はこれませんが毎年たくさんの方が作品を持参し参加します。
どのような作品が見られるかこれからが楽しみです。
みなさんもこのように着手者が精魂込めて作り出す3月の制作展を楽しみにしておいてください。
《展覧会報告》
上記の卒制スクーリングはてんこ盛りの宿題に加えて、内容もてんこ盛り。両日程とも二日目の14:30から京都近美へ出かけました。内容は「交差する表現展」とい展示で、造形作家のデザイン性や工芸性を交えての一風変わった展覧会でした。狩野芳崖や浅井忠、恩地幸四郎なども登場し絵画やデザイン、工芸などの意匠性も楽しくみれる展覧会です。
B日程では、希望者だけ京都市美の関西二科展、近くの細見美術館、府庁となりの中信美術館の三尾公三展などへ足を延ばしました。
私と川村先生、その他半分ぐらいの学生さんは関西二科展と三尾公三展を見てきました。
三尾先生の展覧会は私も川村先生も二度目でしたが、あらためて先生の卓抜した手仕事の跡を拝見し感慨ぶかいものがありました。
さて、私はスクーリングの後風邪をひいてしまい、二日ほどしんどくて家で過ごしていましたが、ふと気づくと、京都国立博物館の「狩野山楽・山雪展」が今週中まで。水曜日からは授業や添削があり日曜日は東京でのガイダンスなので、火曜日に急いて見に行ってきました。
キャンパスメンバーズに入っているので学生さんは300円ですが、私たち教員は一般と同じく1,400円(トホホ)を払って入場。
連休中の混雑は平日で一段落したようで意外にすいていましたのでゆっくりと鑑賞できました。
前回、通学TAをしている立野さんの「山楽は絵画の問題として空間を扱っており、山雪は工芸的で装飾的だったので山楽の方が好きです。」というコメントを頭の片隅において見ていました。
それに加え、川村先生も「山楽はよかった!」という一言も去来しながらでしたが、意外や意外!私には山楽は狩野派を維持する役割のためか、聖徳太子絵伝や今は存在しない巨大な泉涌寺天井画の下絵など処々にその才気を発揮しながらも、狩野派独特(師匠の永徳)の豪放磊落な筆致を受け継がんとして、前評判とは違いなんとなく「大変だったのだろうなあ。」などと絵とは別の感慨を覚えてしまったのです。
かたや、山雪は狩野派を踏襲しながらも、自分独自の表現を模索していたのがありありと見えてきました。どちらかと言えば永徳などの豪放な感じを嫌い、繊細で優しさの表現に徹していたように思われます。途中からは狩野派ではない雪舟や牧谿などの水墨画、漢画のミニアチュール的な影響などが色濃く反映されています。特に、それまではぼかしなどで処理されてきたグレースケールのみを駆使した不思議な作品はフロンティアの精神に溢れ、デザイン的な要素は後の浮世絵に影響が色濃く出ています。筆さばきは、太筆の作品は一本調子に見えますがスピードを殺し、浮薄を出すよりもそれを整えようとしてする意図がありありと見え、中間色の扱い方や小筆の扱いに至っては永徳とは逆の筆跡を感じさせない、超絶技巧を意図したことが如実にわかります。
川村先生や立野さんの感じ方、私の感じ方はそれぞれですので、どれが正しい見方などはありませんが、とにかく前知識とは違った「山楽に驚いた!」の一語に尽きる感想となりました。
山楽は狩野永徳に見込まれ、その後の狩野派を背負って立たねばならぬ運命であり、山雪はその山楽のに見込まれた弟子であり、婿となった人です。二人とも狩野家の血筋ではないけれど、門人でありながら、宿命のもと狩野家を託されたわけですから、私たちがとてもたどり着けない血の出るような訓練のもと、自分の絵がどうあるべきかを狩野派とみられる社会性とともに必死に探りながら生きた人なのだと思いました。
この二人の展覧会は日本絵画史の中の、狩野派というものを知るのに大変役だったように思います。
展示は12日まで、特に金曜日からの三日間は混むと思いますが、行ける人は必見です。(Y)
(金曜日は夜20時まで見られますが、並ぶのを覚悟で行った方が良いと思います。)
【教員展覧会案内】
ちょっとつけたしになりますが、ひとつ教員の展覧会を案内しておきます。
抽象スクーリングでおなじみの中島一平先生の個展案内です。
DMがデスクに置いてあったのに気付かなかったので、お知らせが遅れました。
DMだけでデータで案内をいただいていないので地図などはありませんが、HPの紹介をしておきますので、中島先生ファンの方はHPで地図を参照して是非ご覧ください。(Y)
http://galleryhaku.com/
場所:ギャラリー白3 〒530-0047大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3F ℡06-6363-0493
会期:5月6日(月)~18日(土) 11:00~19:00(土曜日17:00まで)日曜休廊